孫と医療保険のプレゼントと贈与税及び相続税 4

12月に入り名古屋もかなり寒くなってきました。

前回は、相続開始後、医療保険を相続した場合の課税関係について説明しました。

この度は、生前に保険契約の名義変更をした場合の課税関係を説明しようと思います。

医療保険の契約者を祖父母から孫に名義変更をすると、契約者孫・被保険者孫、となり、あたかも保険を贈与したように見えます。

また、保険の名義変更の課税関係を考えるとき、評価が問題となります。

保険契約の税金上の評価は、保険を解約したときに解約返戻金がいくら戻ってくるかという点から行います。

医療保険の場合は、大抵掛け捨ての保険が多く、解約返戻金はほぼないことが多いです。

そういった前提から、祖父母から孫に生前に、保険の名義変更が行われると、贈与税がかかるかどうかの判断を行い、年間110万円以下であれば贈与税がかからないと書いてあるネット記事がありますが、間違いです。

保険の名義変更について、相続税法は、保険事故が発生した場合において、保険金受取人が保険料を負担していないときは、保険料の負担者から保険金等を相続、遺贈又は贈与により取得したものとみなす旨規定しています。

つまり、祖父母がなくなった際に、相続税の検討を行うことになります。 名義変更という、保険料を負担していない保険契約者の地位は課税上は特に財産的に意義のあるものとは考えておらず、契約者が保険料を負担している場合であっても契約者が死亡しない限り課税関係は生じないのです。

孫と医療保険のプレゼントと贈与税及び相続税 3

11月に入り名古屋も少し肌寒くなってきました。

この度は、祖父母が契約者、孫を被保険者として、医療保険を全期前納払いされている前提で、相続の際に誰が医療保険の契約者となるか、ということから説明をしていきます。

まず、医療保険契約に関する権利は相続財産である以上、基本的には、相続人間で分割協議が行われ、相続人の内の一人、被相続人の子ども(孫から見ると親)が契約者になります。

なお、相続人全員が合意すれば、孫が契約者になることができると規定している保険会社が多いようです。

相続人全員が合意した場合に、孫が契約者となる場合、課税関係がどうなるのか検討している文献は少ないのですが、相続人全員が合意したからといって、法律上、遺言がないにも関わらず祖父母から孫に相続財産が直接遺贈されるということは考えにくいです。

相続人(全員又は相続人のうちの一人である孫の親)が一旦相続し、その相続人から孫に贈与されると考えると自然かと思われます。(私見)

そのため、相続税が発生する場合は、保険契約に関する権利を最終的に受け取る孫ではなく、相続人に税金の負担が生じると思われます。

孫と医療保険のプレゼントと贈与税及び相続税 2

10月に入り、名古屋もだいぶ涼しくなってきました。

今回は、医療保険をプレゼントする場合に贈与税や相続税がかかるのか、前回の続きを説明をしていきます。

祖父母が契約者、孫を被保険者として、医療保険を全期前納払いすることによって、医療保険をプレゼントする場合を前提とします。

この医療保険の税法上の財産的価値は、この医療保険を解約する場合に返金される解約返戻金の金額となります。

そして、全期前納払いしている場合、本来の払込期間が経過していない部分については、医療保険を解約すれば返金されます。

そのため、例えば、年間保険料20万円、10年間払込む医療保険については、保険契約後5年目になると、経過していない5年分の保険料100万円が解約返戻金相当額であり、医療保険の財産的価値となります。

なお、10年間経過すると、保険会社によりますが、解約返戻金は0円~数万円となることが多いです。

払込期間中に相続が起きると、解約返戻金相当額が相続財産に含まれ、相続財産全体の金額が基礎控除額を超えると相続税の対象となります。

上記のように年間保険料20万円、払込期間10年間の医療保険で、5年経過後に相続がおきると、100万円の価値のある相続財産となり、相続税の対象となります。

払込期間が終わると、上記のように解約返戻金相当額0円から数万円が相続財産となり、相続税の対象となります。

(続きは次回)

孫と医療保険のプレゼントと贈与税及び相続税 1

9月に入っても、名古屋はまだまだ厳しい暑さが続きます。

本日は、孫に医療保険をプレゼントした場合の課税関係について説明していきたいと思います。

よく生前対策で保険に入ることをおすすめされる方がいますが、それは死亡保険金であることが多いです。

一時払いの終身生命保険は、通常貯蓄性がありますし(解約すれば解約返戻金が一定額返金されるという意味です。)、死亡した際に死亡保険金が法定相続人の人数✕500万円の範囲で非課税となります。

上記の保険と異なり、本日説明するのは、掛け捨ての医療保険となります。(本当に掛け捨ての保険しかないのか、というのは後述します。)

医療保険、特に、契約者・保険料負担者祖父母、被保険者孫、受取人祖父母であることを想定します。

また、保険料の払い方も重要です。

医療保険の場合、保険料を終身で支払う方が多いですが、これは月々の支払いを少なくするためです。

しかし、孫へ医療保険をプレゼントする場合、保険料を終身で支払う場合には、契約者である祖父母が被保険者の孫の代わりに支払えるのは、自分の生存中に限られます。

そのため、医療保険のプレゼントをする場合は一定期間、例えば10年間で払込期間が終わる方法で医療保険の保険料を支払う契約にします。

10年間で終身の保証期間の医療保険の保険料を支払うので、一見短期的には高い保険料に見えますが、平均寿命まで生きることを前提として終身で保険料を支払う場合の合計額よりも割安になることが多いです。

そして、10年間で払込期間が終わるとしても、年払い(年に1回保険料を払い込む方法)で保険料を支払う場合に、契約書の祖父母が亡くなれば、契約を引き継ぐ契約者が残りの保険料を支払う必要が出てきますので、保険料の負担を次世代に残すことになってします。

そのため、医療保険料をプレゼントする場合は、全期前納払い(保険期間中の保険料を一度に払い込む)をすることがおすすめとなります。

まずは、医療保険のプレゼントの考え方、ポイントの説明をしました。 次回に続きます。

空き家特例と床面積

最近、名古屋の相続した実家を売却した方から、空き家特例の適用範囲について、相談を受けました。

 実家の敷地(1筆の土地)に、本宅と離れがある場合、本宅に対応する敷地部分にしか空き家特例の適用ができません。

 国税庁HPでは、床面積に応じて(按分して)特例の適用できる範囲を計算するのだと記載がありました。

 ただ、本宅及び離れが平屋ではない場合、総床面積で按分するのか、建築面積(通常1階部分の床面積)で按分するのか、どちらが正しいのでしょうか。

 その点について、国税庁のHPには記載がありませんでした。

 ある大手税理士事務所のネット記事では、総床面積で按分するのが正しいと明記されていましたが、根拠が記載されていませんでした。

 もう少し調べてみると、令和2年6月19日裁決(https://www.kfs.go.jp/service/JP/119/03/index.html)という裁決例がありました。

 この裁決例では、空き家特例そのものに関する裁決ではなく、居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例の適用に関する裁決で、建築面積で特例の適用の対象面積を決めるべきであるとの判断がされました。

 しかし、複数の建物が同じ敷地にあり特例の適用の対象となる部分を限定しようとしている点、厳密には空き家と居住用財産では意味が異なるものの人の居住用部分を限定しようとしている点では空き家特例と居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例は類似していています。

 そうすると、更に調べることで異なる見解、根拠が出てくる可能性もありますが、空き家特例においても、総床面積ではなく、建築面積で敷地を按分して、特例適用面積を計算するほうが正しいように思われます。

相続税と土地の評価

相続税の計算上、土地の相続税評価額は、1筆単位で評価するのではなく、1画地単位で評価を行います。

利用の単位となっている1区画の土地のことを1画地といい、このように評価単位の考え方は、土地を評価するうえで一番最初に検討が必要で、一見簡単そうに見えますが、実は難しいことも多いです。

例えば、評価単位は、原則として地目ごとに評価します。

宅地の横に山林や畑があれば、原則として地目ごとに評価単位を考えます。

ただし、例外として、市街化調整区域以外の都市計画区域で、市街地農地や市街地山林が宅地の横(地続き)にある場合には、その形状、地積の大小、位置等から考えて、これらを一体として評価することが合理的と認められる場合には、一体として評価することになります。

具体的には、市街地山林や市街地農地が仮に宅地適用を想定した場合に、標準的な家屋を建てるための土地の面積に比べて著しく狭い場合、形状から考えて標準的な家屋を建てるのが難しい場合、位置から考えて単独で評価すると無道路地となり家屋を建てるのが困難となる場合、には地目が異なっていても宅地と山林や農地を一体として評価することがあります。

名古屋に限らず、市街地農地は郊外の土地だと以外と残っています。

評価単位の考え方を間違ってしまうとどの路線に面している土地なのかどうか、地積規模の大きな宅地にあたるか、どうか等大きく評価額が異なる場合もあるので、注意が必要です。

相続税と民法

弁護士は法律のことは何でも知っている、もちろん税法のこともよく知っていると思われるかたもいらっしゃいますが、実際には、相続税法に詳しいと言える税理士はあまり多くありません。

弁護士は民法に詳しくても相続税法に詳しくない場合があるというのは、下記のような相違点があることも原因の一つです。

1 相続放棄について

 民法上、相続放棄をした方は最初から相続人ではないことになり協議に参加することもありません。他方、相続税法上、相続税の計算をする際には、相続放棄をしても法定相続人の数にいれて計算することになります。

2 養子について

 民法上、何人でも養子縁組をすることができます。他方、相続税法上、相続税を計算をする際には、法定相続人の数に入れる養子の人数に制限があります。具体的には、実子がいる場合は一人まで、実子がいない場合は二人まで法定相続人の数を計算にいれることができます。

3 生命保険金、退職金について

 民法上、生命保険金や退職金は、原則として受取人固有の財産となり、分割協議を行うを必要すらありません。他方、相続税法上、相続税の課税対象となります。ただ、生命保険金や退職金は非課税枠があるため相続税法上有利な扱いをうけます。

4 評価時点について

 民法上、遺産分割をする際には遺産分割時の時価で分割方法を決めることになります。他方、相続税法上、相続税の計算は相続開始時店の評価で行うことになります。

相続税と養子縁組2

5月に入り、名古屋も暑い日が多くなってきましたが、たまに夜に冷えることもあるので体調管理が難しい季節です。

相続税対策も兼ねて養子縁組を検討されている方もいらっしゃいますが、未成年を養子にする場合には、メリット、デメリットがあります。

メリットとしては、養子縁組全般に言えることですが、基礎控除額および保険金の非課税枠が、実子がいる場合は1人分まで、実子がいない場合には2人分まで、増えます。

そのため、相続税が確実に減ります。

また、相続税の計算上、相続人が増えることで税率が低くなる可能性もあります。

また、未成年の場合は、未成年控除の適用を受けることができ、未成年者控除を未成年者本人が使い切れない場合には、民法の場の扶養義務のある親等がその未成年者控除の恩恵を受けることができます。

そのため、税金面では、ほぼメリットしかありません。

他方、失敗例としては、養子も相続人のうちの一人であることから生じることが多いです。

過去に相談を受けた事例では、未成年者を養子にしていた方が遺言書を作成していませんでした。

遺言書を作成していない場合には、相続人間でも分割協議が必要になります。

しかし、未成年者は、一人では分割協議に加わることができません。

通常は、未成年者の意思表示は、親が代わりに行うものですが、孫養子の場合は、その孫養子と相続人である親は、被相続人の財産について、片方の取り分が増えればもう片方の取り分が減るという関係にあるので、例外的に親が代わりに意思表示をすることができません。

そのため、裁判所に申し出て、特別代理人という人を用意することが必要であり、手続きが複雑になります。

遺言書があればそういった手続きの複雑さが軽減されますが、相続手続き全体に詳しくないと落とし穴があるのが相続の難しさと言えます。

2世帯住宅と相続税

これから、名古屋で2世帯住宅を建てようと考えている方は、やり方によって、相続税について、大きな節税を行うことができます。

 その節税できる理由、注意点について、大枠をお話できればと思います。

 まず、基本的に、2世帯住宅は、相続税を少なくするという観点からは、親の資金で建てるようにしてください。

 子供を甘やかせてはならない、子供にも一家の主たる自覚を持たせるといった目的から、子供の資金又は子供がローンを組み、2世帯住宅を建てさせるという方もいますが、相続税の観点からはおすすめしません。

 例えば、3000万円で家を建てる計画を建てることを前提とします。

親の財産が現金で1億円、子供が3000万円を持っていた場合、子供が全部家の建築資金を出したとすると、子供の財産はゼロ、親の財産は1億円がそのまま残り相続税がたくさん発生します。

 相続人が子供一人だとすると、相続税は、約1200万円です、

 そのため、子供の総財産は、相続後、8800万円(1億円-1200万円)の現金と家ということになります。

 他方、親が全部家の建築資金を出した場合、子供は3000万円の財産を残したままです。親の財産は7000万円と家となります。

 3000万円で建築した家だとしても、木造であれば、数十年後、相続税評価額は、数百万円程度にまで下がります。

 そのため、親に相続が起きた場合でも、500万円程度の相続税で済みます。

そのため、子供の総財産は、相続後、9500万円(3000万円+7000万円-500万円)の現金と家ということになります。

 他にも、敷地部分について、小規模宅地の特例といった土地の評価額の減少ができるかどうか、住宅資金贈与を使うかどうか、といった点も、相続税に関わってきますので、これから2世帯住宅を建てようと考えている方は、税理士にご相談ください。

配偶者の税額軽減の特例の注意点と修正申告

名古屋も厳しい寒さが少しずつ和らいできました。

確定申告の時期でもありますが、私の場合は、相続税に関する業務のほうが多く、いくつも質問をいただきます。

最近では、配偶者の税額軽減の特例に関す質問がありました。

配偶者の税額軽減の特例は、配偶者であれば1億6000万円まで相続税がかからないという、簡単な特例だと考えられている方も多いです。

ただ、思いもしない落とし穴もあります。

配偶者にあたる方の中には、自分には税金がかからないから相続税の申告を適当にしていても大丈夫だと、安易に考えている方もいらっしゃいます。

多少、相続税申告において、財産の計上が漏れていても税務署に指摘されたら対応すればいいと思っていらっしゃるようです。

 しかし、税務調査に入られ、気付いていたにもかかわらず、めんどくさい場合も含めて、わざと申告していなかった場合には、特例の適用を受けることができません。

 実際、私が申告した案件ではありませんが、名義預金を税務調査で指摘され、特例の適用を受けることができず、配偶者であるにも関わらず相続税を払うことになってしまったという方から相談をうけたことがあります。

なお、わざとではなく、何らかの事情で相続財産の計上が漏れていた場合であれば、税務調査に入られる前に、修正申告をすることで特例の適用を受けることができます。

相続税申告についてご不安な方は、お気軽にご相談ください。

譲渡所得と固定資産税精算金の関係

確定申告の時期になってきたので、名古屋の土地を売却した方から、譲渡所得について、税金の計算について相談を受けることがありました。

譲渡所得の計算のためには、譲渡の際の収入と費用を確認する必要があります。(また、購入価格等の取得費の確認もする必要があります。)

譲渡の際の収入は、単純に売買価格であると考えてしまうかたも多いと思います。

ただ、実は、売買の際に売主が受け取る固定資産税の精算金も譲渡の際の収入となります。

固定資産税の精算金とは、毎年1月1日時点の所有者に1年分の固定資産税の支払い義務があることから、年の途中に所有者が変わるので、固定資産税を買主に負担すべきとして精算金が支払われるお金です。

実質的に、買主の固定資産税を負担してもらうべき金額であり、収入には入らないと思うかもしれません。

しかし、税務署としては、やはり、不動産の1年分の固定資産税の納付義務は売主にあるということは変わらず、買主が固定資産税を負担することなくその不動産を所有する期間があるという状況を調整するために個別具体的に調整が行われるにすぎず、支払を受けた未経過固定資産税に相当する額は、実質的には不動産の譲渡対価の一部と考えるのが妥当だと考えます。

このことは、国税庁のサイトの質疑応答事例集「未経過固定資産税等に相当する額の支払を受けた場合」にも記載されているので、気になった方は調べてみることをおすすめします、

配偶者の死亡と配偶者の税額軽減の特例の適用

相続税の申告の際に、配偶者の税額軽減の特例を使えるかどうかは、相続税の金額に大きな影響を及ぼします。

 名古屋の方で、実際に相談があったのは、被相続人が亡くなった時点では、相続人が配偶者と子供2人だったのが、相続財産の分割協議を行う前に配偶者が亡くなってしまったという事実関係でした。

 被相続人の相続財産は残された子供2人で分割するしかなく、配偶者の税額軽減の特例は使う余地がないと私より前に相談した税理士に言われたとのことでした。

 しかし、これは間違った説明です。

 たしかに、配偶者が分割協議前に亡くなれば、民法上は配偶者は財産を相続することは出来ません(亡くなっている方が財産を相続することは通常できません)ので、配偶者の税額軽減の特例も使えないようにも思えます。

 しかし、この結果は配偶者が分割協議をして財産を取得してから、すぐに亡くなった場合と事実関係はほとんど変わらないにも関わらず、比較するとかなり不公平な結果となります。

 上記のような場合でも、不公平な結果とならないように、子供2人の分割協議において、死亡した配偶者の取得する財産を明確にした場合には、配偶者の税額軽減の特例を使うことができると相続税基本通達19の2-5に記載があります。

「相続税基本通達19の2-5 相続又は遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によって分割される前に、当該相続(以下19の2-5において「第1次相続」という。)に係る被相続人の配偶者が死亡した場合において、第1次相続により取得した財産の全部又は一部が、第1次相続に係る配偶者以外の共同相続人又は包括受遺者及び当該配偶者の死亡に基づく相続に係る共同相続人又は包括受遺者によって分割され、その分割により当該配偶者の取得した財産として確定させたものがあるときは、法第19条の2第2項の規定の適用に当たっては、その財産は分割により当該配偶者が取得したものとして取り扱うことができる。(昭47直資2-130追加、昭50直資2-257、昭57直資2-177、平17課資2-4、令元課資2-10改正)」

 このように、相続税の計算及び特例の可否の検討の際には、民法とは異なる考え方をすることも多いので注意が必要です。

譲渡所得と競売

名古屋もぐっと冷えてきて、朝起きるのがどんどんつらくなってきました。

この時期寒さが厳しくなるにつれ、確定申告の時期が近づいて来たのを文字どおり肌で感じます。

また、年末に近づき、確定申告を意識し始めるこの時期は、色々な方、特に土地の売却をした方から税金関係について聞かれることも多くなってきます。

最近、その中でも、少し特殊な事情があるので心配になったという方からの質問がありました。

借入が返せなくなり、抵当権の実行の結果、競売することになった場合にも譲渡所得の申告が必要なのか、という心配です。

もちろん、取得費(主に購入時にかかった費用)と譲渡費用(仲介手数料等)を超えた金額で、売却することになれば、原則として譲渡所得税がかかります。

しかし、借金返済のために強制的に手放すことになった場合にも税金を納める必要があるとすれば、かなりの負担を強いることになります。

そのため、例外として、

簡単に言えば、

①競売代金が全額債権者への支払又は配当に充てられ、かつ、

②資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合には、譲渡所得税はかかりません。

 

このように、譲渡所得は色々な例外があるので、心配な方は専門家に相談ください。

相続税の2割加算と相続人でない方が受け取る保険金について

 相続税の2割加算とは,相続や遺贈等によって相続財産を取得した方が,被相続人の一親等の血族(代襲相続人含む)および配偶者以外の人である場合に、その人が本来支払うべき相続税額に2割加算して納税が必要なことをいいます。

孫に遺贈した場合などが,典型的な例です。

最近、名古屋在住の方から、孫が可愛いので、子供だけではなく、孫にも相続の際にお金を渡したい。だから、死亡保険金の受取人を孫にしているんだ、と仰ってるかたがいらっしゃいました。(ちなみに、その方は、子供には相続財産が渡るからという理由で、保険金の受取人を子供にせずに孫にしていました。)

孫が可愛いというお気持ちは大切ですが、相続税の観点からすると、最悪でしたのでアドバイスをして保険の受取人を子供にして、事なきを得ました。

どういうことかというと、まず、保険金には非課税枠(500万円×法定相続人の人数)があるというお話は大抵の方はご存知ですが、相続人ではない方には非課税枠の適用はないということをご存知ではない方が多いです。

また、孫は相続人ではないので、相続人である子供が払うべき相続税より2割加算されるということもご存知でない方が多いです。

この2つの知識をかけ合わせると、

孫に保険金を渡そうとした場合は、保険金の非課税枠の適用を受けることができず、課税財産が増え全体の相続税が増えるばかりか、孫は相続人ではないので、通常より2割税金が増えることになります。

よかれと思ってしたことが、相続税をかなり増やすことになりかねない行動だったのです。

税金を抑えるのであれば、非課税枠の範囲で、子供を保険金の受取人にして、その保険金を年間110万円以内で、孫たちに渡してくれるように頼んでおくのが良い方法かと思います。

税金には思わぬ落とし穴がありますので、財産額が大きい場合は、専門家に相談することをおすすめします。

住宅取得資金贈与の特例と注意点

 最近、他の県から引っ越し、名古屋で自宅を建てる予定の方から親から資金の贈与を受けているが贈与税をできる限り減らしたいという方から相談を受けました。

いわゆる住宅取得資金贈与の特例は、自宅建物を建てるために先行取得する土地を取得するためにも利用することのできる特例ですが、土地の取得と建物の取得の時期にズレが有るため、落とし穴もあります。

住宅取得資金贈与は、その名のとおり、住宅を取得するために贈与を受けますので、贈与を受けた側の方は、土地及び自宅建物を取得している必要があります。

 そのため、贈与を受けた金銭をすべて土地取得に充て、建物は贈与を受けていない配偶者の名義100%で登記をする場合には、特例の適用を受けることはできません。

 また、令和5年に贈与を受けた金銭を土地取得にあてた場合には、令和6年3月15日までに建物が新築でなければ、特例の適用を受けることはできません。

 ただし、この新築というのは、引き渡しが終わっていなくとも、少なくとも屋根がある状態であれば、大丈夫です。

 なお、住宅取得資金贈与の特例は、あくまで資金の贈与の際に使える特例なので、土地を現物で贈与する場合には、特例の適用は受けることができません。

 他にも注意点はたくさんありますので、心配な方はお気軽にご相談ください。

相続税と養子縁組1

 9月に入りましたが、名古屋の暑さはとどまることを知りません。
 また、雨が急に降ってきたり、天気も不安定です。

 皆様もどうぞ体調管理にお気をつけてお過ごしください。

 さて、本日は相続税申告の基本でありつつ、間違えると大変なことになる法定相続人についての話題です。
 法定相続人については、簡単に考える方が多いですが、養子縁組をした場合には慎重に検討する必要があります。
 被相続人の方は資産家であるものの子供がいなかったため、親族のうちの一人を養子としていました。(養子縁組は平成20年)
 その養子には子供が二人(平成15年生まれの長男、平成22年生まれの次男)いました。
 残念ながら養子の方が被相続人の方よりも先に亡くなっていました。
 そのため、養子の子供2人を代襲相続人、つまり法定相続人を2人として申告をしようとする方もいると思います。
 しかし、今回のケースでは、養子縁組の後に生まれている次男は、代襲相続人とはなることができません。
 そのため、法定相続人は1人となります。
 法定相続人は1人か2人かで税金が大きく変わりますので、養子縁組がある場合には、注意が必要です。

 詳しくは相続に詳しい弁護士、税理士にご相談ください。

相続人以外の方が遺産を受け取ることができるか、また、そのデメリット

最近、名古屋にお住まいの方から相続についてご相談を受けました。
最近父が亡くなり、相続人は子供2人であるとのことでした。
そして、相談の内容というのは、その相続人の方にも子供がいるがその子供に、相続財産の中から1000万円の財産を相続させることができるか、というご質問でした。
このご質問について、結論としては、相続させることはできないという回答でした。
相続財産は、相続人間で分割協議をする場合は、たとえ、相続人全員の合意があったとしても、相続人以外の方に相続させることはできません。
 相続人以外の方に相続財産を渡したい場合には、生前に遺言書を作成して、その相続人でない方に相続させるという内容を残しておく必要があります。
 遺言書がなく、死後に、相続人以外の方に相続財産を渡す方法はありません。
 ただし、遺言書により、相続人以外の方に相続財産を渡す場合には、受遺者という立場になります。
 受遺者に生前に贈与した財産については、遡って相続財産に加算されますので、受遺者に暦年贈与している方は注意が必要です。

 なお、相続人が一度受け取った後に、その相続人の財産を相続人ではない孫に財産を渡すことはできます。
 ただし、贈与税がかかりますので、どれくらいの金額を渡すかは事前に贈与税をシミュレーションすることをお勧めします。

相続と非上場株式の売却に関する税金

株式の売却益には税金がかかりますが、様々な場合があり注意が必要です。
上場株式では、原則として、株式の売却益について、所得税及び住民税合わせて、約20%の税金がかかります。
 名古屋のある非上場会社の株式を相続により取得した方が、相続後3年程度経過してからその会社に株式を買い取ってもらうことを考えていました。
 その方は、約20%程度の税金を払えば大丈夫と考えていたのですが、これは間違いです。
 非上場会社の株式を売却すると、実質的には株主が会社から利益の払い戻しを受けたのと同じであり、みなし配当にあたり総合課税となるため、所得税及び住民税合わせて、最大約55%の税金がかかってきてしまいます。
 ただし、いつでもこの税金がかかるわけではなく、「相続で取得した非上場株式を発行会社に譲渡した場合の課税の特例」の適用を受けることにより、上場株式の売却と同様、約20%の税金ですむこともあります。
 要件としては、相続税が生じていることや相続発生から原則として3年10か月以内に行われた譲渡であること等があります。
 上記の相談にのった方は、もうすぐ相続発生から3年10か月が経過するという時期でした。
 そのため発行会社に買取の打診をして売却すること等のアドバイスをしました。
 特例を知っているか知らないかだけで、税金に大きな違いが出ることもありますので、税金でご不安な方は税理士に相談することをお勧めします。

財産分与と課税関係

本日は、離婚の際の課税関係について説明していきます。

なお、令和3年の離婚件数は、3,736組で、婚姻件数は11,798組で、3組に1人は離婚するといわれているので、課税関係に興味がある方も多いと思われます。

離婚により夫婦の一方が片方に財産を渡すことを財産分与といいます。
結婚中に形成した財産は、夫婦が協力した結果の賜物ですが、通常、名義としては、稼ぎ頭の夫名義の財産とされます。
しかし、夫名義の財産であってもその実質は妻の一定の協力があったからこそ作り上げられたものなので、
離婚の際に、清算や離婚後の妻の生活保障のための財産分与請求権という権利の行使の結果、お金の移動があります。
贈与とは、無償で財産を与えることをいうので、上記のように、財産分与請求権の行使という理由がある以上、夫婦が離婚の際に、財産の移動があったとしても、原則として通常、贈与税がかかることはありません。

ただし、例外的に、贈与税や譲渡所得税の課税対象となることがあります。
例えば、夫が会社員、妻が専業主婦であるという前提で、妻が夫の財産額の99%の財産をもらったように、分与された財産の額が夫婦の協力によって得た財産の額より多過ぎる場合には、多過ぎる部分に贈与税がかかります。
また、離婚の際の財産分与が贈与税等を免れるために行われたと認定されれば、財産分与額にすべてに贈与税がかかります。
また、不動産を分与(所有権移転)した場合、その時の不動産の時価で譲渡が行われたとみなされるため、分与した側が分与した財産を譲渡したことになり、確定申告時期に譲渡所得を申告しなければなりません。
分与した不動産が居住用である場合は、居住用財産の3000万円の特別控除を受けることができる可能性があります
ただし、夫婦間の譲渡では、上記の特例の適用を受けることができないので、必ず離婚してから財産分与の合意をしましょう。
なお、長期譲渡所得と短期譲渡所得は税率の違いがかなりあります。
将来、分与を受けた土地や建物を売った場合には、財産分与を受けた日を基に、長期譲渡になるか短期譲渡になるかを判定することになりますので注意が必要です。

詳しくは、弁護士、税理士にご相談ください。

公正証書遺言と注意点

最近、名古屋の方で、公正証書遺言の作成をお手伝いする際に、公証人にいろいろとご質問させていただく機会がありました。

一般的に、遺言者が気になるのは、遺言がどのように保管されるのか、いつまで保管されるのか、つまり、自分が死んだ時に遺言書の内容が実現されるのかということです。

公正証書遺言の作成の際には、正本と謄本を受け取りますが、そのどちらも紛失した場合です。

まず、公正証書遺言の保管期間は、具体的には法律上定められていません。

   公正証書の保存期間は、公証人法施行規則27条で、原則として、20年と定められていますが、特別の事由により保存の必要があるときは、その事由のある間は保存しなければならないと定めています。

   そして、  遺言公正証書は、上記規則の「特別の事由」に該当すると解釈されています。

公正証書遺言作成後140年間保存する取扱いとされていることを確認しました。

ただし、これまで、公正証書遺言を破棄したことはないとのことでした。

 また、公正証書遺言は、実際に公証役場にある倉庫に保管されており、貸倉庫等は利用していないようです。(私が確認した公証役場がそうであるだけで、都内の公証役場であればスペースの関係でどうしているのだろうという疑問はあります。)

なお、万が一正本、謄本を紛失した場合、公証役場で再発行してもらう必要があります。

現在は電子化されているので、遺言者の名前で検索をかければ、すぐに再発行してもらえます。

ただし、電子化前の公正証書遺言は、人力で倉庫から探すため、作成日がわからない場合は、事実上見つけることができない可能性があります。

電子化前の古い公正証書遺言は、紛失した場合に備えて、少なくとも、作成日がいつ頃かわかるようにしておく必要があります。

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