保険と税務調査

相続税申告をした後に、税務調査が行われることがありますが、税務署はどのような財産をきっかけに、また、どのような資料から税務調査を行うかどうか決めるのでしょうか。
 税務調査には、いろいろきっかけがありますが、その中でも保険関係で税務調査に入られることがあります。
 なぜなら、保険会社から税務署に支払調書が提出されるからです。

 まず、前提として、死亡保険金は、500万円×法定相続人の人数で算出される金額が非課税となりますが、その枠を超えると課税されます。
 また、保険契約に関する権利、つまり契約者及び受取人が被相続人、被保険者が相続人といった保険で、名義変更して相続人が受け継ぐ保険についても相続財産となり、課税財産となります。
 保険契約に関する権利について非課税枠はありません。

 上記の死亡保険金の金額や保険契約に関する権利について名義変更する際の解約返戻金相当額の金額について、保険会社は税務署に伝えることが法律上定められています。
 その金額が支払調書に記載されています。
 そのため、税務署の目をかいくぐることはできなくなります。
 また、税務署に隠すつもりがなくとも、そもそも相続税が課税されることを知らずに、税務調査が来て始めてそのことを知ったという方が、名古屋の納税者にいました。

 何が相続財産になるかわからない、税務調査が怖いという方はお気軽にご相談ください。

青色申告と提出期限と相続

相続に絡む税金は、相続税だけではありません。
被相続人が個人事業を営んでいた場合には、相続人が事業を引き継ぐことも多いでしょう。

名古屋の収益物件をお持ちの方から相談をうけたのですが、被相続人が青色申告をしている場合には、相続人も青色申告をしたいと考えることが多いです。
相続とは関係なく、一般的に、青色申告をする場合には、その年の3月15日までに、青色申告承認申請書を提出する必要があります。
また、被相続人が1月1日から8月31日までに亡くなられた場合には、相続開始日から4か月以内に青色申告承認申請書を提出すれば、その年の青色申告を行うことができます。
被相続人が9月1日から10月31日までに亡くなられた場合には、その年の12月31日までに青色申告承認申請書を提出すれば、その年の青色申告を行うことができます。
被相続人が、11月1日から12月31日までに亡くなられた場合には、翌年の2月15日までに青色申告承認申請書を提出すれば、その年の青色申告を行うことができます。
このように、準確定申告の提出期限は、相続開始日の翌日から4か月以内です。
青色申告承認申請書について提出する必要があるというだけでなく、準確定申告の提出期限よりも短い期限が定められていることがあることにも注意が必要です。

空き家特例と老人ホーム

被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例(以下、「空き家特例」といいます。)は、適用ができれば、譲渡所得税をかなり減額することができます。

名古屋の老人ホームに入所していた被相続人の子供の方から、空き家特例の適用を受けることができるか、質問を受けたことがあります。

まず、、被相続人が要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所していた場合にも、一定の要件を満たせば適用を受けることができます。

ただ、被相続人の配偶者が老人ホームに入所している場合で、被相続人の居住用財産を子供が相続し売却してもこの特例の適用を受けることはできるのでしょうか。

国税庁のホームページを確認すると、

「要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所するなど、特定事由により相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった場合で、一定の要件を満たすときは、その居住の用に供されなくなる直前まで被相続人の居住の用に供されていた家屋(以下「従前居住用家屋」といいます。)は被相続人居住用家屋に該当します。」とあります。

この要件について、注意点としては、ざっくりいうと、被相続人が一人暮らしの状態で、居住用家屋から老人ホーム等に入所したという事実が必要です。

つまり、被相続人の配偶者が先に老人ホームに入所し、その後、被相続人が一人暮らしの状態となり、その後被相続が老人ホームに入所したという事実が必要となります。

その他の場合、具体的には、

①被相続人とその配偶者が同日に老人ホームに入所した場合には、被相続人が一人暮らしの状態で、実家から老人ホームに入所したとはいえませんので、空き家特例の適用可能性はありません。

②被相続人が先に老人ホームに入所し、その後、被相続人の配偶者が一人暮らしの状態となりその後、被相続人の配偶者が老人ホームに入所した場合には、被相続人が一人暮らしの状態で、実家から老人ホームに入所したとはいえませんので、空き家特例の適用可能性はありません。

確定申告と代償分割・換価分割

相続した遺産を売却する際には、譲渡所得が課税される可能性があります。
売却金額から取得費用と譲渡費用を控除し利益があれば、その金額を譲渡所得として、確定申告する必要があります。
では、相続した遺産を売却する際にはだれが、確定申告する必要があるのでしょうか。
それは、遺産の分割方法によって異なります。
ここでは、代償分割と換価分割の場合に分けて考えます。
代償分割とは、遺産を共同相続人の一人又は一部の者が不動産等の現物を取得し、他の相続人に代償金支払うことで清算する遺産分割の方法をいいます。
代償分割により不動産を取得した方は、その不動産を確定的に取得したといえるので、その不動産を売却した場合に、確定申告するのは、当然不動産を取得した方となります。
居住用不動産の3000万円控除の特例や空き家特例は、不動産を取得した方について、要件を満たすかどうか、検討することになります。
換価分割とは、共同相続した不動産等の遺産を直接分割の対象とせず、実質的には未分割の状態で不動産等の遺産を売却(換価)し、その売却金を共同相続人間で分割する遺産分割の方法をいいます。
 そのため、売却代金の取得割合に応じて、各共同相続人がそれぞれ確定申告をする必要があります。
 また、それぞれが確定申告をするので、特例の適用を受けることができるのかどうかは、その相続人ごとに検討することになります。

 相続に強くない弁護士は、税金について、知識が不足している場合もあり、確定申告及び特例適用のことまで検討せずに協議をまとめてしまうことがあります。
 土地を相続し、売却することを検討されている方は、相続に詳しい弁護士・税理士にご相談ください。

相続税と団信

相続税申告の際には、すべての財産と債務を申告書に記載する必要があります。
それでは、相続開始時点で被相続人に住宅ローンが残っている場合、また、団信でその住宅ローンが返済済みになった場合は、どのように相続税申告書を作成すべきでしょうか。
 名古屋にお住まいの方から上記の質問を最近受けたので、備忘録もかねてブログにします。

相続税申告書には、相続開始時点でのプラスの財産もマイナスの財産もすべて記載して、相続税の計算をする必要があります。
 そのため、相続開始時点で被相続人に住宅ローンが残っている場合には、その残高を申告書に記載し、課税される相続財産の価額を計算することになります。

団信でその住宅ローンが返済済みになった場合には、団信により支払われた生命保険金の金額を記載するのではないかと考える方や生命保険の非課税枠が使えるのではないかと考える方もいらっしゃいます。
しかし、団信により支払われた生命保険金は、住宅ローンの借入先金融機関に直接支払われることになり、相続人に支払われるわけではないので、生命保険の非課税枠の適用を受けることができるわけではありません。
それどころか、相続人に支払われるわけではないので、相続税申告書に記載する必要すらありません。
相続開始時点で、住宅ローンを消滅させたと考え、団信により支払われた生命保険金を相続税申告書に記載せず、住宅ローンをマイナスの財産として記載しないというのが、正しい方法となります。

相続と準確定申告

相続が発生した時、相続税の申告期限を気にする方は多いですが、準確定申告の申告期限を気にする方は意外と少ないです。

愛知県内での年間の被相続人の人数は7万人程度、相続税申告をするだけの財産をお持ちの方は1万人程度います。
名古屋でもかなりの方が準確定申告をしていると推測できます。

 準確定申告は、相続開始を知った次の日から4か月以内に申告する必要があります。
 相続税の申告と比べて、申告期限までの猶予が半分以下の短さなので気を付ける必要があります。
 そして、申告期限に間に合うように、準備を早めにすることが必要です。
 意外と知られていないのが、準確定申告に必要な資料の一つである年金の源泉徴収票 送られてくるのが遅いということです。
 通常、年金事務所で、未支給年金の請求手続きを行うと、約2か月程度で日本年金機構から年金の源泉徴収票が送付されてきます。
 ただ、3か月程度かかることがある場合もあるので、資料収集だけでも申告期限ぎりぎりになることがありますので、注意が必要です。
また、準確定申告は、通常の確定申告とは、異なる内容がいくつかありますので、ご心配な方は、相続税も含めて、税理士に相談をしてみましょう。

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孫養子かつ代襲相続人

相続税申告において、法定相続人の人数は非常に重要な意味を持ちます。

なぜなら、相続税の納税義務を判断する一定の金額である基礎控除額は法定相続人の人数により決まりますし、生命保険金や退職金の非課税枠の上限も法定相続人の人数で決まるからです。

法定相続人の人数が一人変わるだけで、相続税申告の要否、相続税額が大きく変わってきます。

それでは、孫が祖父の孫養子となり、かつ、孫の親(祖父から見ると子)が亡くなり、孫養子が代襲相続人としての立場も得た場合には法定相続人の人数は、同一人物であることを理由に1人となるのか、立場が2つあるので2人分として計算されるのか、どうなるのでしょうか。

この点について、相続税基本通達に定めがあります。

相続人が、孫養子であり、かつ、代襲相続人である場合は、相続税の計算上、法定相続人の数としては1人としてカウントします。なお、民法上の相続分としては、それぞれの資格に応じた相続分の合計額となります。
(代襲相続人が被相続人の養子である場合の相続人の数)
相続税基本通達15-4 相続人のうちに代襲相続人であり、かつ、被相続人の養子となっている者がある場合の法第15条第2項に規定する相続人の数については、その者は実子1人として計算するのであるから留意する。(昭57直資2-177追加、平元直資2-207改正)
(注) この場合の相続分は、代襲相続人としての相続分と養子としての相続分との双方を有するのであるから留意する。(国税庁HPより引用)

相続税は、民法の知識も必要になりますが、民法とは異なる点があるという点で、弁護士でも間違う方はいらっしゃいます。

相談する際には、相続及び相続税に詳しい専門家に相談することが重要になります。

空き家特例とリフォーム

 空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)は、譲渡所得税を減額する特例です。適用できれば最大3000万円の控除を受けることができ、かなり税金を低減することができます。
 この特例の要件は、数多くありますが、家屋ごと敷地を売却する場合には、家屋を引き渡しの日までに耐震リフォームをすることが要件の一つとなります。
 その耐震リフォームについて、どの程度のリフォームが必要なのか。第三者機関が入るのか等、特例適用条件を満たす工事内容が知りたい、と名古屋の不動産を相続した方から質問を受けたことがあります。
 ただ、このリフォームについては、税理士が行うわけではなく、また、税理士がリフォームの証明書を発行するわけでもありません。
 建築事務所登録している建築士、指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関に依頼して発行してもらうことになります(建設住宅性能評価書は登録住宅性能評価機関のみ)。

 発行手続きについては耐震診断やリフォームの依頼をする予定の建築士事務所、該当する機関にお問い合わせください。
 しかし、そもそも要件を見たすことができるかは、事前に検討が必要ですので、特例の適用を考えている方は、お気軽にご相談ください。

空き家特例と共有で相続した空き家

最近、相続で空き家を取得した相続人の方々から、このような質問を受けました。
「現在相続登記手続き中ですが、法定相続人が5人います。
仮に5名の共有名義にして相続登記を行った場合、譲渡所得税の申告において全員が空き家特例の適用は受けられるのでしょうか。」というご質問です。


回答は、以下のとおりです

5人で売却すれば、それぞれが独立して3000万円以内で控除を受けることができます。
なお、5人それぞれが譲渡所得税の申告が必要になります。
そうすると、単純計算で1億5000万円の不動産を売却しても、譲渡所得税が発生しないようにも思えます。
しかし、空き家特例は、被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等の譲渡の対価が1億円以下であることが、その適用要件の1つとされています(措法35③)。
したがって、共有者全体の譲渡対価の合計額が1億円を超える場合などには、各共有者ともどもこの特例を適用することができませんので注意が必要です(措法35⑤⑥)


空き家特例の適用のためには、他にも要件があります。

適用を受けることができるかどうかで譲渡所得税が大きく異なりますので、相続で空き家を取得された名古屋の方は、いつでもお気軽にご相談ください。

ドル建ての死亡保険金と相続税

 死亡保険金も相続税が課される財産です。
 民法上は、受取人の財産であり、相続財産とはならないのですが、相続税法上は、みなし相続財産として、相続税が課されます。
 ただし、死亡保険金は、「500万円×法定相続人の人数」の金額だけ、非課税財産となります。
 さて、死亡保険金と一口にいっても、円建ての保険やドル建ての保険等、様々な種類があります。
 円建ての保険の場合、支払われた金額を死亡保険金の金額として、相続税申告書に記載すればいいので簡単です。
 しかし、ドル建ての保険の場合、ドルで死亡保険金が支払われるものの、相続税申告書にドルのまま記載することはできず、円に換算する必要があります。
 相続開始後しばらくたってから、ドル建ての死亡保険金の請求をすると、請求時の為替相場で死亡保険金が支払われるので、その金額を記載することがあります。
 しかし、それは間違いです。
 ドル建ての死亡保険金は、相続開始日における為替相場で換算するのが正しい方法です。 
 なお、相続開始日が休日で相場がない場合には、相続開始日前日以前で最も近い日の最終為替相場で計算すれば大丈夫です。
 最近は急激に為替相場が変動していますので、邦貨換算の時期を間違えば、かなりの金額の誤差が出ますので、注意が必要です。
 ドル建ての死亡保険金を受け取り相続税申告が必要な方は、お気軽にご相談ください。
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成年後見人と相続税の申告期限

相続税申告の依頼を受けるとき、最初に皆様が心配されるのは、期限のことです。
相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月後です。
その10か月後の日が土日祝日であれば、その次の平日が申告期限となります。

上記が通常の申告期限ですが、常に、申告がスムーズにできるわけではありません。
例えば、相続人が認知症で弁識能力がない場合、相続税の申告をすることができません。
そのため、法定代理人、つまり成年後見人を選任しようとしても、かなりの時間がかかります。
 そのため、成年後見人が選任された時点で、10か月の申告期限が迫っており、間に合わないのでは、と考える方もいます。
 この点については、相続税基本通達27-4の規定が参考になります。
 この規定では、「 相続開始の事実を知ることのできる弁識能力がない幼児等 法定代理人がその相続の開始のあったことを知った日(相続開始の時に法定代理人がないときは、後見人の選任された日)」と記載されています。

 このため、成年後見人が選任されたのが遅くなっても、焦らずに相続税の申告書を作成し、選任の日の翌日から10か月以内に申告をすれば大丈夫です。

 名古屋の方で、相続税の申告期限が心配されている方は、まずは、お気軽に電話でご相談ください。

家なき子特例と保有要件2

家なき子特例の保有要件(当該宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること)について前回の質問の他に次のような質問が来たことがあります。

申告期限までに特例の対象となりうる宅地の引き渡し及び所有権の移転はしない、しかし、売買契約は締結し、建物は取り壊して宅地の引き渡しの準備をしている場合にも保有要件をみたすのか、という質問です。

ちなみに、所得税法では、譲渡所得発生の時期は原則として引渡日ですが、契約日を譲渡所得発生の時期として確定申告をすることができます。
しかし、これはあくまでも、収入の帰属認識に関する考えから引渡日と契約日の選択ができるのであって、小規模宅地等の特例という措置法に規定された相続税に関する優遇措置という異なる場面で、譲渡所得の考え方が及ばないと考えるのが通常です。
なお、準用するとの規定もありません。

そのため、通達等があるわけではありませんが、民法上引渡日までは所有権を相続人が有しているのであり、相続税の申告期限前に土地の売買契約をしていたとしても、所有権が移転しない以上、相続税申告期限時点では、当該宅地を有しているといえ、保有要件を満たすと考えられます。

小規模宅地等の特例の適用は、様々な要件があり、実は難しい特例といえます。

名古屋の方で相続税にご不安を抱えている方はいつでもお気軽にご相談ください。

家なき子特例と保有要件

相続税の計算において、小規模宅地等の特例により、土地の評価額を最大80%減額することができます。
特に、被相続人の居住の用に供されていた宅地を被相続人の配偶者以外かつ同居していない親族に適用可能性のある特例を家なき子特例といいます。
持ち家を持っていない相続人が相続することで、特例の適用があるので、このような呼ばれ方がされます。

そして、家なき子特例のうち、保有要件という要件があります。
具体的には、「当該宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること」という要件があります。

具体的に、どのような質問があるかまた、その回答を説明していきたいと思います。

申告期限までに特例の対象となりうる宅地上の建物を取り壊した場合にも小規模宅地等の特例の適用を受けることができるのかという質問です。
ちなみに、同居親族が特例の適用を受けるためには、「相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつ、その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること。」という要件があるので、上記のように建物を取り壊せは特例の適用はできません。

それに対して、
 同居していない持ち家を所有していない相続人が適用可能性のある、家なき子の特例は、土地を保有していることが要件となっています。
 つまり、建物の保有要件もなく、建物に居住するという要件もないので、申告期限までに建物を取り壊したとしても家なき子の保有要件を満たします。

名古屋で、小規模宅地等の特例の適用についてご不安な方は、いつでもお気軽にご相談ください。

譲渡所得と取得時期

不動産を売却する際にも税金が関わってきます。
この税金のことを譲渡所得税といいます。
不動産は、取得してからの期間が短ければ、税率が高くなってしまいます。

具体的には、
譲渡所得金額は譲渡価額-(取得費+譲渡費用)で計算します
長期譲渡所得の場合は、譲渡所得金額×15%(住民税5%)
短期譲渡所得の場合は、譲渡所得金額×30%(住民税9%)
が税額となります。

長期譲渡所得とは譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるものをいいます。
短期譲渡所得とは譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下のものをいいます。

判断に迷う人がいるのは、
例えば、相続や贈与によって売却の1年前に取得した資産の取得の時期はいつになるのかという点です。
この点については、
相続や贈与によって取得したときは、被相続人や贈与者の取得の時期がそのまま取得した相続人や受贈者に引き継がれます。

したがって、被相続人や贈与者が取得した時から、相続や贈与で取得した相続人や受贈者が譲渡した年の1月1日までの所有期間で長期譲渡所得か短期譲渡所得かを判定することになります。

名古屋で不動産を売却した方、譲渡所得について、ご不安なことがある方は、税理士に相談することをおすすめします。

相続時精算課税と贈与した年の贈与者死亡

生前対策の一つとして、相続時精算課税制度の適用について、相談を受けることが最近多くなってきています。

相続時精算課税制度の適用を受ける場合、2500万円まで贈与税がかかりません。

その意味で、財産の先渡しとして、有用な制度となります。

 その代わりに、相続の際に、相続財産に相続時精算課税制度適用贈与に相当する金額を加算して、相続税を算出します。

 もし、相続財産に相続時精算課税制度適用贈与に相当する金額を加算しても、相続税の基礎控除額を下回る場合には、申告も納税も不要です。

 ただし、贈与者は贈与をした年に死亡した場合で、相続人が相続時精算課税制度の適用を受けようとする場合は、贈与税の申告期限の提出期限又は相続開始の日の翌日から10ヶ月を経過する日のいずれか早い日までに、相続時精算課税選択届出書を提出する必要があります。

 期限までに相続時精算課税選択届出を提出できなかった場合には、その適用を受けることができませんので注意が必要です。

 暦年贈与として、基礎控除額110万円を控除した残額に税率をかけて、贈与税を納める必要があります。

名古屋の方で、相続時精算課税制度の適用を考えている方は、お気軽にご相談ください。

贈与税がかからない財産について

相続税を計算する際には、相続開始3年前までの相続人及び受遺者に対する贈与財産の額を加算して、相続税額を算出します。
 この贈与財産の加算は、年間110万円の基礎控除額の範囲内の贈与だったとしても行われます。
 ただし、そもそも贈与税の非課税財産に当たる場合には、この加算はなされません。
 具体的には、
扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの(相続税法第二十一条第の三第1項第2号)、について、よく相談をうけます。
この規定のとおり、学校の授業料を支払う場合には、相続財産と切り離して考え、加算する必要すらありません。
ただし、教育費をまとめて先渡ししている場合は、この規定に当てはまらず、通常どおり贈与財産額を相続財産に加算する必要があります。
なお、さらに例外として、一定の要件を満たし教育資金贈与の特例の適用が可能であれば、教育費の先渡しであっても、相続財産に加算する必要はありません。

このように、相続税、贈与税に関する規定は、例外だけでなく、例外の例外が設けられることも多いので、相続や贈与により、税金が発生しそうだと考える名古屋の方は、お気軽にご相談ください。

税理士法人心のサイトはこちら

負担付死因贈与と遺贈

事件の関係で負担付死因贈与契約について調べる機会があったので、気になったことを書いていこうと思います。

書籍と同時並行で、ネットではどのようなことが書かれているのかも調べていたのですが、遺贈との対比に関する記述で、

遺贈は、相続人全員が遺言と異なる内容で分割協議をしてしまうと、受遺者は無理矢理に遺言内容を実行することはできない、だから負担付死因贈与契約のほうが実行性の点において、優れているんだという記述がかなりの数見つかりました。

しかし、受遺者の利益というのは、当然守られるべきもので、受遺者の意思に反して、相続人全員が遺言と異なる受遺者の利益を侵害する内容で分割協議をしても、その協議よりも遺言が優先されます。

 遺言と異なる内容で分割協議をするためには、受遺者を含め相続人全員の同意が必要となるというのが正しいです。

 遺贈は、相続人全員が遺言と異なる内容で分割協議をしてしまうと、無理矢理に遺言内容は実行することはできないという点について、根拠を調べましたが、根拠らしい根拠は見つかりませんでした。

 ただ、負担付死因贈与契約に関して調べた場合に上位に表示されるページにはどれも似通った表現で同様のことが書かれていました。

 おそらく、負担付死因贈与契約についてSEO上成功した記事をよく調べることもなく、他の人が真似をしていくつも似たような記事ができたのではないかなと推測しています。

 私も全ての専門書、裁判例を調査したわけではないので、間違いがないとは言い切れないのですが、

一般論として、自分で専門書、裁判例を調べる能力がないと感じるのであれば、ネット記事は鵜呑みにせず、法的なトラブルが起こりそうな場合には、弁護士に相談することをおすすめします。

 特に、相続は、金額が大きくなりがちなので、注意が必要です。

配偶者の税額軽減と障害者控除

相続税は、相続財産が基礎控除額を超える場合に、相続財産を受け取る方に納付の義務があります。

 また、各種、特例や控除があり、相続税が減額される場合がありますが、その適用の関係について、判断に迷うこともあります。

 よく聞かれるのが、配偶者の税額軽減の特例と障害者控除の関係です。

配偶者の税額の軽減の特例とは、被相続人の配偶者が取得した相続財産が、 1億6千万円又は配偶者の法定相続分相当額、どちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。

他方、障害者控除とは、相続人が障害者である場合で、その障害者が満85歳になるまでの年数1年につき10万円(特別障害者の場合は1年につき20万円)の金額を控除できるという制度です。

また、障害者控除額が、その障害者本人の相続税額では、引き切れない部分の金額については、その障害者の扶養義務者(配偶者、直系血族及び兄弟姉妹のほか、3親等内の親族のうち一定の者)の相続税額から差し引くことができます。

それでは、配偶者が障害者である場合、障害者控除額はどうなるでしょう。

相続人である配偶者が障害者でもある場合、配偶者の税額軽減の特例により、その配偶者は障害者控除を使わなくとも、相続税額は0になることが多いです。。

この場合、配偶者が本来控除を受けるはずであった障害者控除額については、配偶者の扶養義務者(例えば、子供)の相続税額から差し引くことができます。

 ただし、障害者控除の適用があるのは、財産を取得した相続人です。

 そのため、配偶者が全く相続財産を受け取らず、配偶者の税額軽減の特例の適用がなくとも、相続税額がゼロの場合は、障害者控除の適用を受けることもできないため、差し引けなかった障害者控除額を扶養義務者の相続税額から差し引くこともできないので注意が必要です。

 相続税は、落とし穴が多い分野ですので、相続税について心配を抱えている方は、名古屋駅近くの当法人にお気軽にお越しください。

令和4年度税制改正大綱 贈与税・相続税の一体課税について、言及なし

令和4年度の税制改正大綱について、令和3年12月10日に正式発表がありました。


正式発表前のニュースで相続税・贈与税の一体課税の話題がありませんでした。

そして、発表されたものを確認しても、相続税・贈与税の一体課税については、何も触れられておりませんでした。

そのため、今年だけでなく、令和4年度についても、暦年贈与は有効な節税方法といえます。
なお、昨年の令和3年度税制改正大綱では、格差固定防止のため、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直す、と記載されていたことから、大きな話題となっていたところ、 相続税・贈与税の一体課税の方針が転換したわけではありません。数年後に税制が変わる可能性もありますので、注意が必要です。

住宅資金贈与について

最近、住宅資金贈与について、質問を多くうけるので、よく質問を受ける点をまとめていこうと思います。

 また、住宅資金の贈与は、贈与税だけ考えればいいと思っている方も多いですが、消費税の知識考え方も必要となってくる場面もあります。

まず、住宅資金贈与の特例の非課税限度額は

住宅用の家屋の新築等に係る対価等の額に含まれる消費税等の税率が10%である場合

住宅用家屋の新築等に係る契約の締結日 省エネ等住宅 左記以外の住宅
平成31年4月1日~令和2年3月31日 3,000万円 2,500万円
令和2年4月1日~令和3年12月31日 1,500万円 1,000万円

上記以外の場合

住宅用家屋の新築等に係る契約の締結日 省エネ等住宅 左記以外の住宅
~平成27年12月31日 1,500万円 1,000万円
平成28年1月1日~令和2年3月31日 1,200万円 700万円
令和2年4月1日~令和3年12月31日 1,000万円 500万円

という表が国税庁HPに記載されています。

令和3年12月1日に省エネ住宅でない新築にかかる契約締結があった場合の非課税限度額は、1000万円です。

他方、令和3年12月1日に省エネ住宅でない中古マンションにかかる契約締結があった場合の非課税限度額は、500万円の可能性もあれば、1000万円の可能性もあります。

新築戸建・新築マンションの場合、売主が個人ということはなく、必ず不動産業者になるため消費税(消費税率10%)かかるのです。 

そのため、令和3年12月1日に省エネ住宅でない新築にかかる契約締結があった場合の非課税限度額は、1000万円です。

省エネ住宅でない中古マンションの場合は、

売主が個人の場合は、非課税なので、500万円が非課税限度額です。

売主が不動産会社の場合は、上記のように消費税10%ですので、1000万円が非課税限度額です。