孫と医療保険のプレゼントと贈与税及び相続税 3

11月に入り名古屋も少し肌寒くなってきました。

この度は、祖父母が契約者、孫を被保険者として、医療保険を全期前納払いされている前提で、相続の際に誰が医療保険の契約者となるか、ということから説明をしていきます。

まず、医療保険契約に関する権利は相続財産である以上、基本的には、相続人間で分割協議が行われ、相続人の内の一人、被相続人の子ども(孫から見ると親)が契約者になります。

なお、相続人全員が合意すれば、孫が契約者になることができると規定している保険会社が多いようです。

相続人全員が合意した場合に、孫が契約者となる場合、課税関係がどうなるのか検討している文献は少ないのですが、相続人全員が合意したからといって、法律上、遺言がないにも関わらず祖父母から孫に相続財産が直接遺贈されるということは考えにくいです。

相続人(全員又は相続人のうちの一人である孫の親)が一旦相続し、その相続人から孫に贈与されると考えると自然かと思われます。(私見)

そのため、相続税が発生する場合は、保険契約に関する権利を最終的に受け取る孫ではなく、相続人に税金の負担が生じると思われます。

孫と医療保険のプレゼントと贈与税及び相続税 2

10月に入り、名古屋もだいぶ涼しくなってきました。

今回は、医療保険をプレゼントする場合に贈与税や相続税がかかるのか、前回の続きを説明をしていきます。

祖父母が契約者、孫を被保険者として、医療保険を全期前納払いすることによって、医療保険をプレゼントする場合を前提とします。

この医療保険の税法上の財産的価値は、この医療保険を解約する場合に返金される解約返戻金の金額となります。

そして、全期前納払いしている場合、本来の払込期間が経過していない部分については、医療保険を解約すれば返金されます。

そのため、例えば、年間保険料20万円、10年間払込む医療保険については、保険契約後5年目になると、経過していない5年分の保険料100万円が解約返戻金相当額であり、医療保険の財産的価値となります。

なお、10年間経過すると、保険会社によりますが、解約返戻金は0円~数万円となることが多いです。

払込期間中に相続が起きると、解約返戻金相当額が相続財産に含まれ、相続財産全体の金額が基礎控除額を超えると相続税の対象となります。

上記のように年間保険料20万円、払込期間10年間の医療保険で、5年経過後に相続がおきると、100万円の価値のある相続財産となり、相続税の対象となります。

払込期間が終わると、上記のように解約返戻金相当額0円から数万円が相続財産となり、相続税の対象となります。

(続きは次回)

孫と医療保険のプレゼントと贈与税及び相続税 1

9月に入っても、名古屋はまだまだ厳しい暑さが続きます。

本日は、孫に医療保険をプレゼントした場合の課税関係について説明していきたいと思います。

よく生前対策で保険に入ることをおすすめされる方がいますが、それは死亡保険金であることが多いです。

一時払いの終身生命保険は、通常貯蓄性がありますし(解約すれば解約返戻金が一定額返金されるという意味です。)、死亡した際に死亡保険金が法定相続人の人数✕500万円の範囲で非課税となります。

上記の保険と異なり、本日説明するのは、掛け捨ての医療保険となります。(本当に掛け捨ての保険しかないのか、というのは後述します。)

医療保険、特に、契約者・保険料負担者祖父母、被保険者孫、受取人祖父母であることを想定します。

また、保険料の払い方も重要です。

医療保険の場合、保険料を終身で支払う方が多いですが、これは月々の支払いを少なくするためです。

しかし、孫へ医療保険をプレゼントする場合、保険料を終身で支払う場合には、契約者である祖父母が被保険者の孫の代わりに支払えるのは、自分の生存中に限られます。

そのため、医療保険のプレゼントをする場合は一定期間、例えば10年間で払込期間が終わる方法で医療保険の保険料を支払う契約にします。

10年間で終身の保証期間の医療保険の保険料を支払うので、一見短期的には高い保険料に見えますが、平均寿命まで生きることを前提として終身で保険料を支払う場合の合計額よりも割安になることが多いです。

そして、10年間で払込期間が終わるとしても、年払い(年に1回保険料を払い込む方法)で保険料を支払う場合に、契約書の祖父母が亡くなれば、契約を引き継ぐ契約者が残りの保険料を支払う必要が出てきますので、保険料の負担を次世代に残すことになってします。

そのため、医療保険料をプレゼントする場合は、全期前納払い(保険期間中の保険料を一度に払い込む)をすることがおすすめとなります。

まずは、医療保険のプレゼントの考え方、ポイントの説明をしました。 次回に続きます。

相続税と土地の評価

相続税の計算上、土地の相続税評価額は、1筆単位で評価するのではなく、1画地単位で評価を行います。

利用の単位となっている1区画の土地のことを1画地といい、このように評価単位の考え方は、土地を評価するうえで一番最初に検討が必要で、一見簡単そうに見えますが、実は難しいことも多いです。

例えば、評価単位は、原則として地目ごとに評価します。

宅地の横に山林や畑があれば、原則として地目ごとに評価単位を考えます。

ただし、例外として、市街化調整区域以外の都市計画区域で、市街地農地や市街地山林が宅地の横(地続き)にある場合には、その形状、地積の大小、位置等から考えて、これらを一体として評価することが合理的と認められる場合には、一体として評価することになります。

具体的には、市街地山林や市街地農地が仮に宅地適用を想定した場合に、標準的な家屋を建てるための土地の面積に比べて著しく狭い場合、形状から考えて標準的な家屋を建てるのが難しい場合、位置から考えて単独で評価すると無道路地となり家屋を建てるのが困難となる場合、には地目が異なっていても宅地と山林や農地を一体として評価することがあります。

名古屋に限らず、市街地農地は郊外の土地だと以外と残っています。

評価単位の考え方を間違ってしまうとどの路線に面している土地なのかどうか、地積規模の大きな宅地にあたるか、どうか等大きく評価額が異なる場合もあるので、注意が必要です。

譲渡所得と競売

名古屋もぐっと冷えてきて、朝起きるのがどんどんつらくなってきました。

この時期寒さが厳しくなるにつれ、確定申告の時期が近づいて来たのを文字どおり肌で感じます。

また、年末に近づき、確定申告を意識し始めるこの時期は、色々な方、特に土地の売却をした方から税金関係について聞かれることも多くなってきます。

最近、その中でも、少し特殊な事情があるので心配になったという方からの質問がありました。

借入が返せなくなり、抵当権の実行の結果、競売することになった場合にも譲渡所得の申告が必要なのか、という心配です。

もちろん、取得費(主に購入時にかかった費用)と譲渡費用(仲介手数料等)を超えた金額で、売却することになれば、原則として譲渡所得税がかかります。

しかし、借金返済のために強制的に手放すことになった場合にも税金を納める必要があるとすれば、かなりの負担を強いることになります。

そのため、例外として、

簡単に言えば、

①競売代金が全額債権者への支払又は配当に充てられ、かつ、

②資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合には、譲渡所得税はかかりません。

 

このように、譲渡所得は色々な例外があるので、心配な方は専門家に相談ください。

相続税の2割加算と相続人でない方が受け取る保険金について

 相続税の2割加算とは,相続や遺贈等によって相続財産を取得した方が,被相続人の一親等の血族(代襲相続人含む)および配偶者以外の人である場合に、その人が本来支払うべき相続税額に2割加算して納税が必要なことをいいます。

孫に遺贈した場合などが,典型的な例です。

最近、名古屋在住の方から、孫が可愛いので、子供だけではなく、孫にも相続の際にお金を渡したい。だから、死亡保険金の受取人を孫にしているんだ、と仰ってるかたがいらっしゃいました。(ちなみに、その方は、子供には相続財産が渡るからという理由で、保険金の受取人を子供にせずに孫にしていました。)

孫が可愛いというお気持ちは大切ですが、相続税の観点からすると、最悪でしたのでアドバイスをして保険の受取人を子供にして、事なきを得ました。

どういうことかというと、まず、保険金には非課税枠(500万円×法定相続人の人数)があるというお話は大抵の方はご存知ですが、相続人ではない方には非課税枠の適用はないということをご存知ではない方が多いです。

また、孫は相続人ではないので、相続人である子供が払うべき相続税より2割加算されるということもご存知でない方が多いです。

この2つの知識をかけ合わせると、

孫に保険金を渡そうとした場合は、保険金の非課税枠の適用を受けることができず、課税財産が増え全体の相続税が増えるばかりか、孫は相続人ではないので、通常より2割税金が増えることになります。

よかれと思ってしたことが、相続税をかなり増やすことになりかねない行動だったのです。

税金を抑えるのであれば、非課税枠の範囲で、子供を保険金の受取人にして、その保険金を年間110万円以内で、孫たちに渡してくれるように頼んでおくのが良い方法かと思います。

税金には思わぬ落とし穴がありますので、財産額が大きい場合は、専門家に相談することをおすすめします。

住宅取得資金贈与の特例と注意点

 最近、他の県から引っ越し、名古屋で自宅を建てる予定の方から親から資金の贈与を受けているが贈与税をできる限り減らしたいという方から相談を受けました。

いわゆる住宅取得資金贈与の特例は、自宅建物を建てるために先行取得する土地を取得するためにも利用することのできる特例ですが、土地の取得と建物の取得の時期にズレが有るため、落とし穴もあります。

住宅取得資金贈与は、その名のとおり、住宅を取得するために贈与を受けますので、贈与を受けた側の方は、土地及び自宅建物を取得している必要があります。

 そのため、贈与を受けた金銭をすべて土地取得に充て、建物は贈与を受けていない配偶者の名義100%で登記をする場合には、特例の適用を受けることはできません。

 また、令和5年に贈与を受けた金銭を土地取得にあてた場合には、令和6年3月15日までに建物が新築でなければ、特例の適用を受けることはできません。

 ただし、この新築というのは、引き渡しが終わっていなくとも、少なくとも屋根がある状態であれば、大丈夫です。

 なお、住宅取得資金贈与の特例は、あくまで資金の贈与の際に使える特例なので、土地を現物で贈与する場合には、特例の適用は受けることができません。

 他にも注意点はたくさんありますので、心配な方はお気軽にご相談ください。

相続税と養子縁組1

 9月に入りましたが、名古屋の暑さはとどまることを知りません。
 また、雨が急に降ってきたり、天気も不安定です。

 皆様もどうぞ体調管理にお気をつけてお過ごしください。

 さて、本日は相続税申告の基本でありつつ、間違えると大変なことになる法定相続人についての話題です。
 法定相続人については、簡単に考える方が多いですが、養子縁組をした場合には慎重に検討する必要があります。
 被相続人の方は資産家であるものの子供がいなかったため、親族のうちの一人を養子としていました。(養子縁組は平成20年)
 その養子には子供が二人(平成15年生まれの長男、平成22年生まれの次男)いました。
 残念ながら養子の方が被相続人の方よりも先に亡くなっていました。
 そのため、養子の子供2人を代襲相続人、つまり法定相続人を2人として申告をしようとする方もいると思います。
 しかし、今回のケースでは、養子縁組の後に生まれている次男は、代襲相続人とはなることができません。
 そのため、法定相続人は1人となります。
 法定相続人は1人か2人かで税金が大きく変わりますので、養子縁組がある場合には、注意が必要です。

 詳しくは相続に詳しい弁護士、税理士にご相談ください。

相続人以外の方が遺産を受け取ることができるか、また、そのデメリット

最近、名古屋にお住まいの方から相続についてご相談を受けました。
最近父が亡くなり、相続人は子供2人であるとのことでした。
そして、相談の内容というのは、その相続人の方にも子供がいるがその子供に、相続財産の中から1000万円の財産を相続させることができるか、というご質問でした。
このご質問について、結論としては、相続させることはできないという回答でした。
相続財産は、相続人間で分割協議をする場合は、たとえ、相続人全員の合意があったとしても、相続人以外の方に相続させることはできません。
 相続人以外の方に相続財産を渡したい場合には、生前に遺言書を作成して、その相続人でない方に相続させるという内容を残しておく必要があります。
 遺言書がなく、死後に、相続人以外の方に相続財産を渡す方法はありません。
 ただし、遺言書により、相続人以外の方に相続財産を渡す場合には、受遺者という立場になります。
 受遺者に生前に贈与した財産については、遡って相続財産に加算されますので、受遺者に暦年贈与している方は注意が必要です。

 なお、相続人が一度受け取った後に、その相続人の財産を相続人ではない孫に財産を渡すことはできます。
 ただし、贈与税がかかりますので、どれくらいの金額を渡すかは事前に贈与税をシミュレーションすることをお勧めします。

相続と非上場株式の売却に関する税金

株式の売却益には税金がかかりますが、様々な場合があり注意が必要です。
上場株式では、原則として、株式の売却益について、所得税及び住民税合わせて、約20%の税金がかかります。
 名古屋のある非上場会社の株式を相続により取得した方が、相続後3年程度経過してからその会社に株式を買い取ってもらうことを考えていました。
 その方は、約20%程度の税金を払えば大丈夫と考えていたのですが、これは間違いです。
 非上場会社の株式を売却すると、実質的には株主が会社から利益の払い戻しを受けたのと同じであり、みなし配当にあたり総合課税となるため、所得税及び住民税合わせて、最大約55%の税金がかかってきてしまいます。
 ただし、いつでもこの税金がかかるわけではなく、「相続で取得した非上場株式を発行会社に譲渡した場合の課税の特例」の適用を受けることにより、上場株式の売却と同様、約20%の税金ですむこともあります。
 要件としては、相続税が生じていることや相続発生から原則として3年10か月以内に行われた譲渡であること等があります。
 上記の相談にのった方は、もうすぐ相続発生から3年10か月が経過するという時期でした。
 そのため発行会社に買取の打診をして売却すること等のアドバイスをしました。
 特例を知っているか知らないかだけで、税金に大きな違いが出ることもありますので、税金でご不安な方は税理士に相談することをお勧めします。

財産分与と課税関係

本日は、離婚の際の課税関係について説明していきます。

なお、令和3年の離婚件数は、3,736組で、婚姻件数は11,798組で、3組に1人は離婚するといわれているので、課税関係に興味がある方も多いと思われます。

離婚により夫婦の一方が片方に財産を渡すことを財産分与といいます。
結婚中に形成した財産は、夫婦が協力した結果の賜物ですが、通常、名義としては、稼ぎ頭の夫名義の財産とされます。
しかし、夫名義の財産であってもその実質は妻の一定の協力があったからこそ作り上げられたものなので、
離婚の際に、清算や離婚後の妻の生活保障のための財産分与請求権という権利の行使の結果、お金の移動があります。
贈与とは、無償で財産を与えることをいうので、上記のように、財産分与請求権の行使という理由がある以上、夫婦が離婚の際に、財産の移動があったとしても、原則として通常、贈与税がかかることはありません。

ただし、例外的に、贈与税や譲渡所得税の課税対象となることがあります。
例えば、夫が会社員、妻が専業主婦であるという前提で、妻が夫の財産額の99%の財産をもらったように、分与された財産の額が夫婦の協力によって得た財産の額より多過ぎる場合には、多過ぎる部分に贈与税がかかります。
また、離婚の際の財産分与が贈与税等を免れるために行われたと認定されれば、財産分与額にすべてに贈与税がかかります。
また、不動産を分与(所有権移転)した場合、その時の不動産の時価で譲渡が行われたとみなされるため、分与した側が分与した財産を譲渡したことになり、確定申告時期に譲渡所得を申告しなければなりません。
分与した不動産が居住用である場合は、居住用財産の3000万円の特別控除を受けることができる可能性があります
ただし、夫婦間の譲渡では、上記の特例の適用を受けることができないので、必ず離婚してから財産分与の合意をしましょう。
なお、長期譲渡所得と短期譲渡所得は税率の違いがかなりあります。
将来、分与を受けた土地や建物を売った場合には、財産分与を受けた日を基に、長期譲渡になるか短期譲渡になるかを判定することになりますので注意が必要です。

詳しくは、弁護士、税理士にご相談ください。

公正証書遺言と注意点

最近、名古屋の方で、公正証書遺言の作成をお手伝いする際に、公証人にいろいろとご質問させていただく機会がありました。

一般的に、遺言者が気になるのは、遺言がどのように保管されるのか、いつまで保管されるのか、つまり、自分が死んだ時に遺言書の内容が実現されるのかということです。

公正証書遺言の作成の際には、正本と謄本を受け取りますが、そのどちらも紛失した場合です。

まず、公正証書遺言の保管期間は、具体的には法律上定められていません。

   公正証書の保存期間は、公証人法施行規則27条で、原則として、20年と定められていますが、特別の事由により保存の必要があるときは、その事由のある間は保存しなければならないと定めています。

   そして、  遺言公正証書は、上記規則の「特別の事由」に該当すると解釈されています。

公正証書遺言作成後140年間保存する取扱いとされていることを確認しました。

ただし、これまで、公正証書遺言を破棄したことはないとのことでした。

 また、公正証書遺言は、実際に公証役場にある倉庫に保管されており、貸倉庫等は利用していないようです。(私が確認した公証役場がそうであるだけで、都内の公証役場であればスペースの関係でどうしているのだろうという疑問はあります。)

なお、万が一正本、謄本を紛失した場合、公証役場で再発行してもらう必要があります。

現在は電子化されているので、遺言者の名前で検索をかければ、すぐに再発行してもらえます。

ただし、電子化前の公正証書遺言は、人力で倉庫から探すため、作成日がわからない場合は、事実上見つけることができない可能性があります。

電子化前の古い公正証書遺言は、紛失した場合に備えて、少なくとも、作成日がいつ頃かわかるようにしておく必要があります。

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保険と税務調査

相続税申告をした後に、税務調査が行われることがありますが、税務署はどのような財産をきっかけに、また、どのような資料から税務調査を行うかどうか決めるのでしょうか。
 税務調査には、いろいろきっかけがありますが、その中でも保険関係で税務調査に入られることがあります。
 なぜなら、保険会社から税務署に支払調書が提出されるからです。

 まず、前提として、死亡保険金は、500万円×法定相続人の人数で算出される金額が非課税となりますが、その枠を超えると課税されます。
 また、保険契約に関する権利、つまり契約者及び受取人が被相続人、被保険者が相続人といった保険で、名義変更して相続人が受け継ぐ保険についても相続財産となり、課税財産となります。
 保険契約に関する権利について非課税枠はありません。

 上記の死亡保険金の金額や保険契約に関する権利について名義変更する際の解約返戻金相当額の金額について、保険会社は税務署に伝えることが法律上定められています。
 その金額が支払調書に記載されています。
 そのため、税務署の目をかいくぐることはできなくなります。
 また、税務署に隠すつもりがなくとも、そもそも相続税が課税されることを知らずに、税務調査が来て始めてそのことを知ったという方が、名古屋の納税者にいました。

 何が相続財産になるかわからない、税務調査が怖いという方はお気軽にご相談ください。

青色申告と提出期限と相続

相続に絡む税金は、相続税だけではありません。
被相続人が個人事業を営んでいた場合には、相続人が事業を引き継ぐことも多いでしょう。

名古屋の収益物件をお持ちの方から相談をうけたのですが、被相続人が青色申告をしている場合には、相続人も青色申告をしたいと考えることが多いです。
相続とは関係なく、一般的に、青色申告をする場合には、その年の3月15日までに、青色申告承認申請書を提出する必要があります。
また、被相続人が1月1日から8月31日までに亡くなられた場合には、相続開始日から4か月以内に青色申告承認申請書を提出すれば、その年の青色申告を行うことができます。
被相続人が9月1日から10月31日までに亡くなられた場合には、その年の12月31日までに青色申告承認申請書を提出すれば、その年の青色申告を行うことができます。
被相続人が、11月1日から12月31日までに亡くなられた場合には、翌年の2月15日までに青色申告承認申請書を提出すれば、その年の青色申告を行うことができます。
このように、準確定申告の提出期限は、相続開始日の翌日から4か月以内です。
青色申告承認申請書について提出する必要があるというだけでなく、準確定申告の提出期限よりも短い期限が定められていることがあることにも注意が必要です。

空き家特例と老人ホーム

被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例(以下、「空き家特例」といいます。)は、適用ができれば、譲渡所得税をかなり減額することができます。

名古屋の老人ホームに入所していた被相続人の子供の方から、空き家特例の適用を受けることができるか、質問を受けたことがあります。

まず、、被相続人が要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所していた場合にも、一定の要件を満たせば適用を受けることができます。

ただ、被相続人の配偶者が老人ホームに入所している場合で、被相続人の居住用財産を子供が相続し売却してもこの特例の適用を受けることはできるのでしょうか。

国税庁のホームページを確認すると、

「要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所するなど、特定事由により相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった場合で、一定の要件を満たすときは、その居住の用に供されなくなる直前まで被相続人の居住の用に供されていた家屋(以下「従前居住用家屋」といいます。)は被相続人居住用家屋に該当します。」とあります。

この要件について、注意点としては、ざっくりいうと、被相続人が一人暮らしの状態で、居住用家屋から老人ホーム等に入所したという事実が必要です。

つまり、被相続人の配偶者が先に老人ホームに入所し、その後、被相続人が一人暮らしの状態となり、その後被相続が老人ホームに入所したという事実が必要となります。

その他の場合、具体的には、

①被相続人とその配偶者が同日に老人ホームに入所した場合には、被相続人が一人暮らしの状態で、実家から老人ホームに入所したとはいえませんので、空き家特例の適用可能性はありません。

②被相続人が先に老人ホームに入所し、その後、被相続人の配偶者が一人暮らしの状態となりその後、被相続人の配偶者が老人ホームに入所した場合には、被相続人が一人暮らしの状態で、実家から老人ホームに入所したとはいえませんので、空き家特例の適用可能性はありません。

確定申告と代償分割・換価分割

相続した遺産を売却する際には、譲渡所得が課税される可能性があります。
売却金額から取得費用と譲渡費用を控除し利益があれば、その金額を譲渡所得として、確定申告する必要があります。
では、相続した遺産を売却する際にはだれが、確定申告する必要があるのでしょうか。
それは、遺産の分割方法によって異なります。
ここでは、代償分割と換価分割の場合に分けて考えます。
代償分割とは、遺産を共同相続人の一人又は一部の者が不動産等の現物を取得し、他の相続人に代償金支払うことで清算する遺産分割の方法をいいます。
代償分割により不動産を取得した方は、その不動産を確定的に取得したといえるので、その不動産を売却した場合に、確定申告するのは、当然不動産を取得した方となります。
居住用不動産の3000万円控除の特例や空き家特例は、不動産を取得した方について、要件を満たすかどうか、検討することになります。
換価分割とは、共同相続した不動産等の遺産を直接分割の対象とせず、実質的には未分割の状態で不動産等の遺産を売却(換価)し、その売却金を共同相続人間で分割する遺産分割の方法をいいます。
 そのため、売却代金の取得割合に応じて、各共同相続人がそれぞれ確定申告をする必要があります。
 また、それぞれが確定申告をするので、特例の適用を受けることができるのかどうかは、その相続人ごとに検討することになります。

 相続に強くない弁護士は、税金について、知識が不足している場合もあり、確定申告及び特例適用のことまで検討せずに協議をまとめてしまうことがあります。
 土地を相続し、売却することを検討されている方は、相続に詳しい弁護士・税理士にご相談ください。

相続税と団信

相続税申告の際には、すべての財産と債務を申告書に記載する必要があります。
それでは、相続開始時点で被相続人に住宅ローンが残っている場合、また、団信でその住宅ローンが返済済みになった場合は、どのように相続税申告書を作成すべきでしょうか。
 名古屋にお住まいの方から上記の質問を最近受けたので、備忘録もかねてブログにします。

相続税申告書には、相続開始時点でのプラスの財産もマイナスの財産もすべて記載して、相続税の計算をする必要があります。
 そのため、相続開始時点で被相続人に住宅ローンが残っている場合には、その残高を申告書に記載し、課税される相続財産の価額を計算することになります。

団信でその住宅ローンが返済済みになった場合には、団信により支払われた生命保険金の金額を記載するのではないかと考える方や生命保険の非課税枠が使えるのではないかと考える方もいらっしゃいます。
しかし、団信により支払われた生命保険金は、住宅ローンの借入先金融機関に直接支払われることになり、相続人に支払われるわけではないので、生命保険の非課税枠の適用を受けることができるわけではありません。
それどころか、相続人に支払われるわけではないので、相続税申告書に記載する必要すらありません。
相続開始時点で、住宅ローンを消滅させたと考え、団信により支払われた生命保険金を相続税申告書に記載せず、住宅ローンをマイナスの財産として記載しないというのが、正しい方法となります。

相続と準確定申告

相続が発生した時、相続税の申告期限を気にする方は多いですが、準確定申告の申告期限を気にする方は意外と少ないです。

愛知県内での年間の被相続人の人数は7万人程度、相続税申告をするだけの財産をお持ちの方は1万人程度います。
名古屋でもかなりの方が準確定申告をしていると推測できます。

 準確定申告は、相続開始を知った次の日から4か月以内に申告する必要があります。
 相続税の申告と比べて、申告期限までの猶予が半分以下の短さなので気を付ける必要があります。
 そして、申告期限に間に合うように、準備を早めにすることが必要です。
 意外と知られていないのが、準確定申告に必要な資料の一つである年金の源泉徴収票 送られてくるのが遅いということです。
 通常、年金事務所で、未支給年金の請求手続きを行うと、約2か月程度で日本年金機構から年金の源泉徴収票が送付されてきます。
 ただ、3か月程度かかることがある場合もあるので、資料収集だけでも申告期限ぎりぎりになることがありますので、注意が必要です。
また、準確定申告は、通常の確定申告とは、異なる内容がいくつかありますので、ご心配な方は、相続税も含めて、税理士に相談をしてみましょう。

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孫養子かつ代襲相続人

相続税申告において、法定相続人の人数は非常に重要な意味を持ちます。

なぜなら、相続税の納税義務を判断する一定の金額である基礎控除額は法定相続人の人数により決まりますし、生命保険金や退職金の非課税枠の上限も法定相続人の人数で決まるからです。

法定相続人の人数が一人変わるだけで、相続税申告の要否、相続税額が大きく変わってきます。

それでは、孫が祖父の孫養子となり、かつ、孫の親(祖父から見ると子)が亡くなり、孫養子が代襲相続人としての立場も得た場合には法定相続人の人数は、同一人物であることを理由に1人となるのか、立場が2つあるので2人分として計算されるのか、どうなるのでしょうか。

この点について、相続税基本通達に定めがあります。

相続人が、孫養子であり、かつ、代襲相続人である場合は、相続税の計算上、法定相続人の数としては1人としてカウントします。なお、民法上の相続分としては、それぞれの資格に応じた相続分の合計額となります。
(代襲相続人が被相続人の養子である場合の相続人の数)
相続税基本通達15-4 相続人のうちに代襲相続人であり、かつ、被相続人の養子となっている者がある場合の法第15条第2項に規定する相続人の数については、その者は実子1人として計算するのであるから留意する。(昭57直資2-177追加、平元直資2-207改正)
(注) この場合の相続分は、代襲相続人としての相続分と養子としての相続分との双方を有するのであるから留意する。(国税庁HPより引用)

相続税は、民法の知識も必要になりますが、民法とは異なる点があるという点で、弁護士でも間違う方はいらっしゃいます。

相談する際には、相続及び相続税に詳しい専門家に相談することが重要になります。

空き家特例とリフォーム

 空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)は、譲渡所得税を減額する特例です。適用できれば最大3000万円の控除を受けることができ、かなり税金を低減することができます。
 この特例の要件は、数多くありますが、家屋ごと敷地を売却する場合には、家屋を引き渡しの日までに耐震リフォームをすることが要件の一つとなります。
 その耐震リフォームについて、どの程度のリフォームが必要なのか。第三者機関が入るのか等、特例適用条件を満たす工事内容が知りたい、と名古屋の不動産を相続した方から質問を受けたことがあります。
 ただ、このリフォームについては、税理士が行うわけではなく、また、税理士がリフォームの証明書を発行するわけでもありません。
 建築事務所登録している建築士、指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関に依頼して発行してもらうことになります(建設住宅性能評価書は登録住宅性能評価機関のみ)。

 発行手続きについては耐震診断やリフォームの依頼をする予定の建築士事務所、該当する機関にお問い合わせください。
 しかし、そもそも要件を見たすことができるかは、事前に検討が必要ですので、特例の適用を考えている方は、お気軽にご相談ください。