今回は,所得税法との関係で交際費の範囲を考えてみたいと思います。
交際費の定義について,所得税法上,交際費に関する定義規定は設けられていません。
所得税法上の交際費についても,法人税法と同じ定義でよいといわれています。
そして,交際費の必要経費該当性の判断は,所得税法37条第1項の規定の解釈に基づいて行うことになります。
所得税法第37条
その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(事業所得の金額及び雑所得の金額のうち山林の伐採又は譲渡に係るもの並びに雑所得の金額のうち第三十五条第三項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等に係るものを除く。)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。
この条文を素直に読めば,必要経費とは
①当該総収入金額を得るための直接の費用,
②販売管理費等の業務について生じた費用
となりそうです。
①については,「直接」という文言があるのに対し,②について「直接」という文言がないため,直接間接を問わず業務について生じたものであれば必要経費になるようにも読めます。
しかし,実務では(税務署の見解では),事業との直接性が求められていました。
ところが,これまでの運用に反して,平成24年9月19日東京高裁(平成26年1月17日の最高裁第二小法廷で確定)は,弁護士が交際費等の範囲を争った事例で,「ある支出が業務遂行上必要なものであれば,その業務と関連するものであるというべきである。それにもかかわらず,これに加えて,事業の業務と直接関係を持つことを求めると解釈する根拠は見当たら」ないとして事業との直接性は不要との判断をしました。
ただ,気をつけなければならないのは,間接的な費用が全て認められたわけではなく,各支出を個別具体的に見て,業務遂行上必要であり,業務と関連する費用である必要があるということです。
その判断の一部を取り上げると,弁護士会等の公式行事後の懇親会や他の団体との協議会後の懇親会(一次会)については交際費として認め,その二次会については交際費として認めなかったようです。
このように,懇親会といってもその性質はそれぞれ異なりますので,業務に関連するかは慎重な判断が必要です。