弁護士の内堀です。
本日は,公正証書遺言の保管期間についてお話したいと思います。
普通方式の遺言には,自筆証書遺言,秘密証書遺言,公正証書遺言の3種類があります。
このうち,自筆証書遺言,秘密証書遺言は,基本的に,遺言者本人が保存するものなので,保管期間を気にする必要がありません。紛失の恐れはありますが・・・
他方,公正証書遺言は,遺言の原本を公証役場が保存します。
公証役場はどの程度の期間,この原本を保存するのでしょうか。
公正証書遺言の原本保管期間は,原則二十年であると,公証人法規則に規定されています。
公証人法施行規則27条1項
公証人は、書類及び帳簿を、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に掲げる期間保存しなければならない。ただし、履行につき確定期限のある債務又は存続期間の定めのある権利義務に関する法律行為につき作成した証書の原本については、その期限の到来又はその期間の満了の翌年から十年を経過したときは、この限りでない。
一 証書の原本、証書原簿、公証人の保存する私署証書及び定款、認証簿(第三号に掲げるものを除く。)、信託表示簿 二十年
そうすると,60歳の時に公正証書遺言を作成したが80歳を越えて存命の場合,60歳の時に作成した公正証書遺言が破棄されてしまい,新しく公正証書遺言を作り直さなければならないのでしょうか?
その必要はありません。なぜなら,公証人法規則には,さらに,保存期間が満了した後でも特別の事由により保存の必要があるときは,その事由のある間保存しなければならないと,規定しているからです。
公証人法施行規則27条3項
第一項の書類は、保存期間の満了した後でも特別の事由により保存の必要があるときは、その事由のある間保存しなければならない。
公正証書遺言の場合,「保存の必要があるとき」とは,遺言者が生きていることを意味します。
ですので,安心して,公正証書遺言を作成していだければと思います。
なお,厳密にいえば,どの程度の期間が過ぎれば,保存の必要がなくなるとするのかは,公証役場ごとに取扱いがことなります。
遺言者が120歳程度の年齢に達する期間が経過するまで破棄しないという公証役場もあれば,破棄は一切しないという公証役場もあるようです。
名古屋駅前公証役場の場合は,120歳までは確実に保管しているとお聞きしたことがあります。