小規模宅地等の特例の落とし穴(特例対象地が複数ある場合)

小規模宅地等の特例は,自宅の土地,マンションを立てている土地について,5割から最大8割,相続税評価額をさげることのできる制度です。

相続税を適切に減らすためには,高額な資産である土地の評価をさげることが一番効果的な方法といえます。名古屋駅の近くに土地をお持ちの方なら,その相続税評価額に驚かれる人も多いのではないかと思います。

ただし,この小規模宅地等の特例は,その特例対象地を取得する相続人が一番得をする,国が特別に認めた制度(厳密には,土地の相続税評価額が低くなれば,相続財産全体が圧縮されるので,各相続人が納めるべき相続税は少なくなります。)なので,その適用は厳格に判断されます。

通達等で適用の範囲が拡大されることもありますが,原則として要件を個別具体的な事案に応じて解釈することはありません。

 

そして,気をつけなければならないのは,相続財産に特例対象地が複数あり,申告期限までに分割が終わっている特例対象地と分割が終わっていない特例対象地がある場合です。

 

通常,申告期限までに特例対象地の分割が終わらなければ,当初申告では,特例の適用をせずに申告し,3年内分割見込書を添付しておき,分割協議が調った時点で,小規模宅地の特例を適用をし,更正の請求をします。

 

しかし,申告期限時点で,分割が終わっていない対象地がある場合には,分割済みの特例対象地に小規模宅地等の特例を適用するために,相続人全員の同意が必要となります。

相続人全員の同意を得ることができず,小規模宅地等の特例を適用せずに当初申告した場合,分割済みの土地について,特例を適用しないことを税務署に対して意思表示したことになってしまい,すべての土地が分割した後でも,申告期限時点での分割済みの土地について,小規模宅地の特例を適用することができなくなります。

 

小規模宅地等の特例は,一番よく聞く特例の一つですので,その適用も簡単に考えがちですが,実際には,落とし穴がたくさんありますので,心配な方は専門家に相談されることをおすすめします。