相続税の申告後に贈与が発覚した場合と追加で納付が必要な相続税

 8月に入り、まだまだ名古屋は暑さが続きます。

 本日は、ちょっと理不尽にも思える相続税のお話をしたいと思います。

相続税申告をしたのちに、忘れていた相続時精算課税制度による贈与が発覚することがあります。

相続財産が1億円、相続人が被相続人の子供2人(子A、子B)のみで、子Aが相続時精算課税制度による贈与1000万円を受けていた場合を考えます。

子Aが贈与を受けていることが発覚した場合に、子Aが相続税を追加で支払う必要があるのは当然ですが、子Bも相続税を支払う必要があるのはご存じでしょうか。

これは、相続税の計算方法がわかっていないとなかなか理解ができず、揉め事のもとになることもあります。

 相続税は、まず、総財産から基礎控除額を差し引いた課税財産を法定相続分で分割したと仮定して、全体の相続税を計算し、その後、取得財産の割合に応じて、負担する相続財産を決定します。

 分割割合によって、全体の相続税の額が変化するのは法的安定性を欠くことを理由の一つとして、このような計算方法が採用されているといわれています。

相続財産が1億円の場合の計算過程(子A5000万円、子B5000万円相続する旨の分割協議成立)

 1億円-(3000万円+600万円×2)=5800万円

 5800万円×1/2=2900万円

 2900万円×15%-50万円=385万円(法定相続分で分割した場合の相続人一人当たりの相続税)

 385万円×2=770万円(全体の相続税)

770万円×5000万円/1億円=385万円(子Aが取得した財産に応じた相続税)

770万円×5000万円/1億円=385万円(子Bが取得した財産に応じた相続税)

相続財産が1億1000万円の場合の計算過程(子A5000万円、子B5000万円相続する旨の分割協議成立、子Aに相続時精算課税制度適用の贈与1000万円)

1億1000万円-(3000万円+600万円×2)=6800万円

 6800万円×1/2=3400万円

 3400万円×15%-50万円=460万円(法定相続分で分割した場合の相続人一人当たりの相続税)

 460万円×2=920万円(全体の相続税)

920万円×6000万円/1億1000万円≒502万円(子Aが取得した財産に応じた相続税)

920万円×5000万円/1億1000万円≒418万円(子Bが取得した財産に応じた相続税)

このように、相続税が1億円であると申告していたにも関わらず、あとから相続時精算課税制度による1000万円の贈与を子Aが受けていたことが発覚した場合、子Aが追加で約117万円の相続税を納付しなければならないだけでなく、取り分が増えたわけでもない子Bも約33万円の相続税を納付しなければならないことになります。

各相続人が受け取った財産に相続税率を掛けて相続税を算出するのではなく、まず、全体財産にかかる相続税を計算して各相続人が取得した相続財産額に応じて相続税を支払うので、このような結果となります。

相続税の仕組みの計算を知らないと納得ができないかもしれません(仕組みが理解できても納得はできないかもしれません。)。

そうならないように、相続税は、慎重に正確に財産の漏れがないように申告を行う必要があります。