最速で相続税申告書を作成する方法(路線価の発表時期)

相続税の計算の際には、土地の相続税評価額を算出する必要があります。

路線価は、その年1月1日時点の評価です。

令和3年1月1日に亡くなれば、国税庁が発表する令和3年分の路線価をもとに相続税評価額を計算します。

ただし、例えば1月亡くなられた方は、7月まで、正確な相続税評価額を算出することができません。

なぜなら、国税庁がその年の路線価を発表するのが7月になるからです。

ですので、1月1日に亡くなった方の相続税申告を早くしたいとはいっても、7月に入るまで申告することはできません。

7月になるまで相続税の申告資料が集まらないのであれば、7月から申告に向けて動こうという方もいらっしゃいますが、それもお勧めできません。

 なぜなら、1月1日が相続開始日であれば、その年の11月1日が申告期限となり、7月に入って動き出したのでは遅い場合もあるからです。

 そのため、最速で申告書を作成するには、前年の路線価で土地の評価額を計算し、7月に入ってから、その年の路線価で再計算をして、申告書を仕上げます。

 7月まで資料が集まらないから、それまで申告書は作成しませんという税理士もいると聞いたことがありますので、税理士に依頼する場合には、どういった流れでいつまでに申告書を作成するのかというのを契約前に確認することをお勧めします。

 名古屋に土地をお持ちで相続税が心配という方はお気軽にご相談ください。

相続税の申告後に贈与が発覚した場合と追加で納付が必要な相続税

 8月に入り、まだまだ名古屋は暑さが続きます。

 本日は、ちょっと理不尽にも思える相続税のお話をしたいと思います。

相続税申告をしたのちに、忘れていた相続時精算課税制度による贈与が発覚することがあります。

相続財産が1億円、相続人が被相続人の子供2人(子A、子B)のみで、子Aが相続時精算課税制度による贈与1000万円を受けていた場合を考えます。

子Aが贈与を受けていることが発覚した場合に、子Aが相続税を追加で支払う必要があるのは当然ですが、子Bも相続税を支払う必要があるのはご存じでしょうか。

これは、相続税の計算方法がわかっていないとなかなか理解ができず、揉め事のもとになることもあります。

 相続税は、まず、総財産から基礎控除額を差し引いた課税財産を法定相続分で分割したと仮定して、全体の相続税を計算し、その後、取得財産の割合に応じて、負担する相続財産を決定します。

 分割割合によって、全体の相続税の額が変化するのは法的安定性を欠くことを理由の一つとして、このような計算方法が採用されているといわれています。

相続財産が1億円の場合の計算過程(子A5000万円、子B5000万円相続する旨の分割協議成立)

 1億円-(3000万円+600万円×2)=5800万円

 5800万円×1/2=2900万円

 2900万円×15%-50万円=385万円(法定相続分で分割した場合の相続人一人当たりの相続税)

 385万円×2=770万円(全体の相続税)

770万円×5000万円/1億円=385万円(子Aが取得した財産に応じた相続税)

770万円×5000万円/1億円=385万円(子Bが取得した財産に応じた相続税)

相続財産が1億1000万円の場合の計算過程(子A5000万円、子B5000万円相続する旨の分割協議成立、子Aに相続時精算課税制度適用の贈与1000万円)

1億1000万円-(3000万円+600万円×2)=6800万円

 6800万円×1/2=3400万円

 3400万円×15%-50万円=460万円(法定相続分で分割した場合の相続人一人当たりの相続税)

 460万円×2=920万円(全体の相続税)

920万円×6000万円/1億1000万円≒502万円(子Aが取得した財産に応じた相続税)

920万円×5000万円/1億1000万円≒418万円(子Bが取得した財産に応じた相続税)

このように、相続税が1億円であると申告していたにも関わらず、あとから相続時精算課税制度による1000万円の贈与を子Aが受けていたことが発覚した場合、子Aが追加で約117万円の相続税を納付しなければならないだけでなく、取り分が増えたわけでもない子Bも約33万円の相続税を納付しなければならないことになります。

各相続人が受け取った財産に相続税率を掛けて相続税を算出するのではなく、まず、全体財産にかかる相続税を計算して各相続人が取得した相続財産額に応じて相続税を支払うので、このような結果となります。

相続税の仕組みの計算を知らないと納得ができないかもしれません(仕組みが理解できても納得はできないかもしれません。)。

そうならないように、相続税は、慎重に正確に財産の漏れがないように申告を行う必要があります。

相続開始日が休日の場合の有価証券の評価

7月に入り、名古屋もかなり暑い日が続いています。

上場株式も投資信託も相続開始日の終値が相続税評価を行う際に重要な数字となってきます。

しかし、土日祝日は証券市場が開いていないため、そもそも、終値というものが存在しません。

こういった場合、思いつくのは、前後の数字を評価のために採用することです。

有価証券であっても種類によって、どの数字を採用するかは微妙に異なるので、注意が必要です。

上場株式の場合の相続税評価

上場株式の場合、①相続開始日の終値、②相続が発生した月の終値平均額、③相続発生した月の前月の終値平均額、④相続が発生した月の前々月の終値平均額、の中で最も安い値で評価をします。

 相続開始日が休日の場合は、前後を問わず最も近い日の終値を採用します。

 三連休の中日で、最も近い日の終値が二つある場合は、その二つの終値の平均を採用します。

 なお、

一般的な投資信託の評価方法

基準価格×口数÷1万-源泉徴収額-信託財産留保額、という計算で算出されます。

信託財産留保額とは、解約の際の手数料で、目論見書を確認すれば、その留保割合が記載されています。信託財産留保額のない投資信託も多いです。

相続開始日は休日で、基準価格がない場合は、相続開始日前で一番近い日の基準価格を使って評価をします。

(「課税時期の基準価額がない場合には、課税時期前の基準価額のうち、課税時期に最も近い日の基準価額を課税時期の基準価額として計算する。」財産評価基本通達 199 証券投資信託受益証券の評価 抜粋)

このように、上場株式と投資信託では、相続開始日は休日の場合には、基準とする日が異なることがありますので、注意が必要です。

登記識別情報と登記完了証の違い

名古屋の弁護士の内堀です。

今回は、不動産の登記に関して、勘違いしている方がいたので、どういった勘違いをしていたかを話していきたいと思います。

それは、登記識別情報と登記完了証の違いです。

不動産の売買を原因とする登記を申請する場合には、登記識別情報(又は登記済証)

が必要となります。

 この登記識別情報の代わりに、登記完了証を提出しようとするかたもいらっしゃいますが、登記識別情報と登記完了証は全く別物です。

 登記完了証とは、登記が完了した際に、法務局から交付されるもので、紛失しても再交付はされません。

 登記完了証には、不動産の住所、不動産番号、申請受付番号、受付年月日、登記の目的、登記名義人等が記載されていますので、重要な書類のように見えます。

 ですので、登記識別情報と間違える方もいらっしゃるのかもしれません。

 しかし、登記完了証は、当該不動産の所有権を証明するものではなく、単にその登記手続きが完了したことを証明する書類に過ぎないということです。

 他方、登記識別情報は、平成17年の不動産登記法改正により、登記済証(いわゆる権利証)に代わるものとして導入されたものです。

 登記完了証と一緒のタイミングで法務局が発行する書類で、登記識別情報通知という書類の下部の切取線に沿って目隠し部分を外すと英数字の組み合わせが記載されています。

 その英数字の組み合わせが、登記識別情報です。

 登記識別情報は、売買や贈与を行うときに、登記名義人の本人確認の役割をしますので、他人には知られてはならないものですので、必要な時が来るまで目隠し部分を切り離さないようにしましょう。

相続税とおしどり贈与

1 おしどり贈与とは

おしどり贈与とは、配偶者に贈与する場合に税額を軽減することのできる特例の通称です。

要件の一つに婚姻期間が20年以上の夫婦間の贈与の場合に使える特例なので、仲睦まじい、長年連れ添った「おしどり夫婦」の場合に使えるとして、このような通称がつけられています。

なお、実際には、おしどりは一年ごとにパートナーを変えてしまうそうです。

2 相続税との関係

おしどり贈与による贈与は、2000万円まで、非課税で配偶者に資産を移動させることができ、また、相続開始前3年以内の贈与であったとしても、相続財産に繰り戻す必要はありません。

ですので、相続財産は少なくなり、発生する相続税も少なくなるということになりそうです。

名古屋市の中心部の土地は評価額が大きくなりがちなので、名古屋市に居住用不動産をお持ちの方は、検討されたことがあるのではないでしょうか。

3 おしどり贈与にかかる費用

おしどり贈与も贈与であることには変わらないので、居住用不動産の所有者の名義を法務局に申請する際には、登録免許税がかかります。

また、不動産取得税もかかります。

登録免許税は、不動産の固定資産税評価額の2%、不動産取得税は、不動産の固定遺産税評価額の4%かかります。

ですので、2000万円の不動産をおしどり贈与すると、単純計算で120万円の税金がかかることになります(土地にかかる不動産取得税は軽減されます。)。

4 また、上記2のように相続財産は減少するのですが、配偶者が受け取る財産には、配偶者の税額軽減の特例の適用があれば、1億6千万円又は配偶者の法定相続分に相当する金額までは、相続税がかかりません。

ですので、相続税の点からも意味がなく上記3のコストだけがかかってしまうという結果に終わることもあります。

5 ただし、おしどり贈与を使った贈与をしたほうがいい場面ももちろんあります。

そのことは、次回のブログで説明します。

令和3年度税制改正と教育資金の一括贈与の非課税措置

令和3年度税制改正により、教育資金の一括贈与の非課税措置の一部が改正されることになりました。

 

まず、教育資金の一括贈与の非課税措置は、期間限定であり、本来、令和3年3月31日までの措置でした。

しかし、2年延長されることになり、令和5年3月31日まで適用期間となります。

次回も延長されるとは限りませんので、教育資金贈与を検討されている方は、早めに贈与をしてしまったほうがいいといえるでしょう。

 

また、改正前の教育資金の一括贈与の非課税措置は、死亡前3年以内に非課税措置の適用を受けた場合、死亡時点における管理残額に相続税の課税の対象とされていました。

それが、贈与者の教育資金一括贈与から死亡時までの年数に関わらず、死亡時点における管理残額に相続税の課税対象とすることになりました。

ただし、受贈者が23歳未満である場合、学校に在学している場合、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合、この内のどれかに当てはまれば、死亡時点における管理残額に相続税はかかりません。

 

これまで、被相続人からみて孫やひ孫に教育資金を一括贈与し、管理残額に相続税がかかる場合であっても、2割加算されることはありませんでした。

しかし、令和3年の税制改正により、令和3年4月1日以降には、孫やひ孫に相続税が2割加算されることになりました。

 

このように、増税の方向で、税制が改正されていますので、しっかりと制度の内容を理解して、教育資金一括贈与の額を贈与者、受贈者の年齢等を考慮した上で、決めることがより重要になっています。

 

名古屋にお住まいの方で、生前対策に興味のある方は、お気軽にご相談ください。

相続時精算課税制度の注意点

60歳以上の親や祖父母から20歳以上の子供に贈与する場合、相続時精算課税制度を選択することで、それ以降の贈与について2500万円まで贈与税がかかりません。

 

不動産を購入する際に、不動産会社からこの制度があることを聞いて、2500万円の贈与を親から受けるということをよく聞きますが、注意しなければならないことが多い制度ではあります。

 

まず、贈与税と相続税は密接に関係している税金です。

生前に親から子に資産を移動する場合は、贈与税がかかる可能性があり、親が亡くなった際に子に資産を移動する場合は、相続税がかかる可能性があります。

どちらも、親から子に資産が移動する際にかかってくる税金という意味では、似ている税金といえます。

実際、贈与税法という法律はなく、相続税法の中に贈与に関する規定が含まれています。

 

相続税との関係で、相続時精算課税制度を利用した贈与の意味がないといわれるのは、相続時精算課税制度を利用した贈与によって移動した資産は、相続税の計算の際には全て加算されるからです。

 

このように贈与は、相続税対策の一環として行われることが多いにも関わらず、相続時精算課税制度を利用した贈与は相続税対策として全く意味がないものとなります。

 

また、相続時精算課税制度を一度選択すると、一生涯その効力が続き途中で選択をやめるということはできません。

さらに、相続時精算課税制度を選択した後の贈与について、期限内に申告しなければ、2500万円まで贈与税がかからないという特別控除すら使えず、110万円の基礎控除額も使えず、一律に贈与額の20%の贈与税がかかります。

一度、相続時精算課税制度を選択すれば、無条件で(申告しなくとも)2500万円まで贈与税がかからないと勘違いされているかたもいるので、注意が必要です。

 

こういったことは、相続時精算課税制度があることを教えてくれた不動産会社がフォローすることはほとんどありません。

なお、相続時精算課税制度は、デメリットばかりではなく、親と子の財産状況によっては、非常に有用な制度となることもあります。

資産を動かす際には、税理士や弁護士といった専門家に相談し、自分や親の財産状況にあった方法なのかを確認し、多少費用がかかったとしても専門家に依頼することをおすすめします。

相続時精算課税についての税制改正と添付書類

名古屋は冬の冷え込みがまだまだ続いています。

昨日も雪がちらついていました。

 

さて、今回は、税制改正で申告に必要な添付書類が変わることがあるということを書いていこうと思います。

 

相続時精算課税制度の適用を受けるためには、贈与税の申告書及び法律で定められた添付書類を提出する必要があります。

 

ネットで検索し、検索結果の上位のサイトには、相続時精算課税選択届出書、贈与を受けた人の戸籍謄本、贈与を受けた人の戸籍の附票の写し、贈与をした人の住民票の写し、が添付書類であると書かれています。

 

相続時精算課税は、一度選択すると、生涯続ける必要があり、暦年贈与の非課税枠を使うことができません。

そのため、管轄税務署の把握のため、住所を確認しているようです。

ただし、相続税申告の際には、相続時精算課税制度の適用がある場合に添付書類として戸籍の附票を求めてもいいように思えるのに、提出不要であったりして、こういった書類を提出することにどれほどの意味があるのか、という声もありました。

 

そして、令和元年税制改正では、令和2年1月1日以降の相続時精算課税の添付書類について、住民票及び戸籍の附票等の書類が添付を要しないことになりました(相規11上及び措規23条の5の7、同23条の5の8、同23条の6の改正)

 

ただし、令和元年税制改正で、令和2年1月1日以降の贈与(申告時期は令和3年)という時間差のある改正がされているので、税理士でもこの改正のことを忘れている方もいます。

また、「相続時精算課税制度 必要書類」と検索した場合に出る上位のサイトには、税制改正に対応していないものも多いです。

このように税制は毎年変わるものなので、安易にネット情報は鵜呑みにせずに(大抵のサイトには、法改正がされている可能性があるとの注意書きは書かれています。)、専門家に相談・依頼することをお勧めします。

相続税と贈与財産の加算

前回は、贈与することで、相続財産を減らす方法を説明しましたが、贈与しても意味のない場合があります。

贈与資産の3年内加算と言われることもあります。

これは、相続又は遺贈により財産を取得した者が被相続人から贈与を受けていた場合、相続開始前(つまり亡くなった日から遡って)3年以内のものについては、相続財産に加算して、相続税の計算がされるという制度です。

毎年110万円ずつ贈与を受けているが、贈与税は発生しないので、私には関係ないという相続人の方もいらっしゃいますがそれは間違いです。

贈与税が発生しない基礎控除額以内の贈与であっても相続開始前3年以内に受けた贈与は、加算されることになります。

以上の説明から、気づいた方もいらっしゃるかもしれませんが、あくまでも、相続又は遺贈により財産を取得した者が贈与を受けていた場合の制度なので、相続人ではない孫に贈与していた場合や子供の配偶者に贈与していた場合は、贈与資産の3年内加算がなされることはありません。

相続財産を減らして、相続税を減らすために孫や子供の配偶者に贈与をするというのは、余命がある程度わかっている場合には、相続人が支払う相続税を減らすための有効な方法と言えます。

ただし、孫や子供の配偶者が受遺者となる場合、つまり遺言によって財産を受け取る場合、厳密には受遺者ではありませんが死亡保険金を受け取る場合には、贈与資産の3年内加算の対象になってしまうので、注意が必要です。

このように単に贈与と言っても誰が受け取るかによって、また、相続の際に財産を受け取るかどうかによって、相続税の課税財産は大きく変わってくるので、名古屋にお住まいで、相続税のことが心配な方は、一度税理士法人心にご相談ください。

最適な暦年贈与の額とは

名古屋にお住まいの方から、毎年いくら暦年贈与をしていくのがいいのかという質問を受けました。

 

毎年110万円の贈与であれば、贈与税がかからないので、110万円が相続税を減らすためにベストな贈与額であると信じている方もいらっしゃいますが、全員がそうとは言い切れません。

 

例えば、生前対策を考えている人に配偶者はおらず、法定相続人である子供が二人いると想定します。また、孫も2人いるとします。

 

次に、現在の財産を1億円とし、今から孫二人に贈与をすることで、5年後の財産及びその財産を課税財産とした時に相続税と贈与税の計算がどう変化するかを検討していきます。

 

パターン1 孫二人に100万円ずつ毎年合計200万円を贈与する場合

年110万以内の贈与には贈与税がかからないので、5年間の贈与税の合計は0円です。

また、5年間で1000万円財産が減少しますから、5年後の財産は、9000万円で、相続税は620万円となります。

よって、相続税と贈与税の合計は、620万円となります。

 

パターン2 孫二人に500万円ずつ毎年合計1000万円を贈与する場合

年500万円にかかる贈与税は、48.5万円です。

そのため、贈与税の5年間の合計額は、48.5万円×2×5=485万円

また、5年間で5000万円財産が減少しますから、5年後の財産は、5000万円で、相続税は80万円となります。

よって、相続税と贈与税の合計は、565万円となります。

 

パターン3 孫二人に300万円ずつ毎年合計600万円を贈与する場合

年300万円にかかる贈与税は、19万円です。

そのため、贈与税の5年間の合計額は、19万円×2×5=190万円

また、5年間で3000万円財産が減少しますから、5年後の財産は、7000万円で、相続税は320万円となります。

よって、相続税と贈与税の合計は、510万円となります。

 

相続税と贈与税は税率が異なるため、このように、毎年いくら贈与するかによって、相続税と贈与税の合計額が変わってきます。

上記の例であれば、贈与税はかかってしまうものの毎年300万円程度贈与すれば、効果的な暦年贈与といえます。

 

相続人の人数、相続財産、生前対策を考えている人の年齢によって、いくら贈与すべきかは変わってきますので、一度専門家に相談することをおすすめします。

未分割申告の場合の注意点

1 相続税の申告期限

相続税の申告は,被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。

例えば,令和2年10月7日に亡くなった場合,10か月後の令和3年8月7日が申告期限となります。

なお,申告期限が,土日祝日の場合は,これらの日の翌日が申告期限となります。

被相続人が,名古屋市中村区にお住まいの方は,名古屋中村税務署に申告をする必要があります。

また,相続税の納付も申告期限までに行う必要がありますので,納税準備も必要となります。

2 遺産分割が10か月以内にまとまらない場合のどんなデメリットがあるか

一番大きなデメリットを一言でいうと,納税資金の用意が通常の場合よりも大変になることが多いということです。

遺産分割が10か月以内にまとまらないときでも,相続税の申告期限が延長されることはありません。

遺産分割協議がまとまらない場合は,法定相続分で申告を行い,分割がまとまった後に,再度その分割に従って,申告を行う必要があります。

税額の軽減の特例は,基本的に,実際に財産を取得したことが決まり,その相続人が支払う相続税について,相続人がどういった関係にある者であるか,そういった財産を受け取ったかという点に着目して,適用の可否が決まります。

例えば,配偶者の税額軽減の特例については,本来,配偶者が受け取る財産に相続税がかかってくるはずのところ,配偶者は被相続人の財産で生活していた場合が多く,配偶者の今後の生活が相続財産で保障されるべきであるという考え方のもと,大きな税額軽減があります。

しかし,配偶者が受け取る財産が確定していない状況では,配偶者が具体的にどれだけの相続税が発生するかが確定していないため,配偶者の税額軽減の特例の適用を受けることができないのです。

また,小規模宅地等の特例の適用を受ける事のできる可能性のある土地について,取得する相続人の性質(被相続人と同居していたか等)によって,適用の可否が決まります。

そのため,土地について,誰が取得するか確定しない状態では,そもそも小規模宅地等の特例の適用を受けることができないのです。

3 注意点

未分割で特例の適用を受けずに申告した場合,後に特例の適用を考えている相続人は,「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書と一緒に提出する必要があります。

この書類を提出しなければ,遺産分割協議が終了したあと,税額軽減の特例の適用を受けたことを前提に相続税の申告書を作成し直し,税務署に納めすぎた相続税の還付を求めることができなくなりますので,注意が必要です。

さらに,申告期限後3年以内に遺産分割がまとまらなかった場合には,「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出する必要があります。

相続税申告書と提出日

今回は,相続税の申告書の提出日について,詳しく説明していきます。

 

相続税の申告期限は,相続を知った日の翌日から10か月後となります。

例えば,令和2年2月1日にお亡くなり,名古屋市中区が最後の住所の被相続人についての相続税の申告書は,名古屋中税務署に,令和2年12月1日までに提出する必要があります。

 

申告書の提出日は,原則として,税務署に書類が到達した日となります。

そのため,令和2年12月1日までに,税務署の窓口に提出すれば何も問題はありません。

また,令和2年12月1日の開庁時間の午後5時に間に合わなければ,時間外収受箱に投函することで,令和2年12月1日に提出したことになります。

厳密には,翌日令和2年12月2日に税務署の職員が回収するまでの間に投函された申告書は令和2年12月1日に提出したことになるという運用とのことです。

 

郵送で提出する場合は,どうなるのでしょうか。

国税通則法第22条では,「郵便又は信書便により提出された場合には」、「その郵便物又は信書便物の通信日付印により表示された日」が提出日とみなされます。

 

信書とは,特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書を意味し,相続税の申告書は,信書にあたります。

そのため,申告書を送る場合には,簡易書留,特定記録,レターパックプラス,レターパックライト等のサービスで送るのが確実です。

そうすれば,送った日(通信日付印により表示された日)が提出日となります。

 

ただし,ゆうパック,ゆうメール,ゆうパケット,クリックポストは,信書を送付することができないので,申告書の送付に使わないようにしましょう。

また,宅配会社の宅配便等も信書をおくることができません。

このような,信書を送ることができないサービスで申告書を郵送した場合は,国税通則法第22条の適用はなく,原則どおり,税務署が受け取った日が提出日となります。

 

規模の大きい郵便局のゆうゆう窓口で23時59分までに適切なサービスで,申告書を郵送すれば,申告書をその日に提出したことになります。

ただし,最近では,コロナの影響で,規模の大きい郵便局でも19時までしか,郵送を受け付けてくれない場合もありますので,注意が必要です。

基礎控除額と法定相続人

名古屋の暑さがどんどん増していきます。秋が待ち遠しいです。

 

本日は,基礎控除額について,間違いやすい点について,まとめていこうと思います。

 

相続税の基礎控除額は,3000万円+600万円×法定相続人の数,で計算することができます。

しかし,相続税法上の法定相続人の数と民法上の相続人の数は異なるため,しばしば間違う人がいます。

基礎控除額以下であれば,そもそも相続税の申告の義務はありません。

そのため,相続税の計算において,最も基本的な基準であり,注意深く考える必要があります。

 

 

2 本来,相続人であるはずの者が既に亡くなっている場合

例えば,被相続人に子供が1人いたにも関わらず,被相続人の相続開始時点において,その子供が亡くなっており,被相続人からみて孫が3人いたとします。

この場合,法定相続人の数は,3人ということになりますので,基礎控除額は,3000万円+600万円×3=4800万円ということになります。

 

3 養子が何人もいる場合

養子も一親等の血族であり,民法上の相続人にあたります。例え,養子が何人いても,全員が民法上の相続人です。

しかし,民法上の相続人の数をそのまま基礎控除額の計算の基礎とすると,容易に相続税の課税の潜脱ができてしまいます。

そのため,相続税法では,基礎控除額の計算とできる養子の数の制限を設けています。

具体的には,実子がいる場合には養子の数は1人まで,実子がいない場合には養子の数は2人まで,基礎控除額の計算の基礎とすることができます。

 

4 相続放棄した相続人がいる場合の基礎控除額

相続放棄した相続人がいる場合は,その相続放棄がなかったものとして,基礎控除額の計算をすることになります。

例えば,被相続人の相続人が子供が1人のみ,また被相続人の兄弟が5人いるとします。

相続放棄前であれば,相続人が被相続人の子供1人であるところ,その子供が相続放棄をすれば,相続人は被相続人の兄弟5人となります。

仮に,このような場合に,基礎控除額が,3600万円(3000万円+600万円)から6000万円(3000万円+600万円×5)に増えてしまえば,容易に相続税が変わってしまうことから,相続税の計算においては,相続放棄はなかったものとして計算するという規定が相続税法にはあるのです。

 

このように,民法上の相続人の人数が,相続税の基礎控除額の計算の基礎とならない場合もあることに注意が必要です。

相続税と固定資産税

1 固定資産税と債務控除

固定資産税は,毎年,1月1日時点での土地や建物の所有者に賦課される税金です。名古屋市に土地を持っていれば,市税事務所から通知書がきます。

年の途中で亡くなり未納付分を相続人が払うことになったとしても,本来固定資産税を払うべき人が被相続人であることは変わらず,相続開始日時点で存在する債務で確実と認められるものにあたり,債務控除することができます。

2 相続開始日と債務控除できる固定資産税の範囲

固定資産税は,通常4月、7月、12月、翌年2月の年4回に分けて,納期が定められています。

そのため,1月の途中に亡くなった場合は,納税通知はその年の4月に来るので,固定資産税の税額はわかりません。

もっとも,1月1日時点で被相続人に固定資産税が賦課されることは決まっており,その年の4回分の固定資産税が未納付ということになります。

加えて,前年の最後の1回(納期が2月の固定資産税)も未納付であれば,債務控除できることになります。

3 共有不動産と債務控除できる固定資産税

共有不動産の場合,固定資産税の通知は代表者に送られてきます。

共有者が親子の場合は,親が子供の持分まで支払ってしまうことも多く,固定資産税を一体誰が負担すべきかということを深く考えないこともあるようです。

しかし,相続税の計算においては,持ち分に応じて,固定資産税も負担する義務があるということを厳格に考える必要があります。

ですので,被相続人が共有不動産の納税通知を代表して受け取っている場合には,全ての固定資産税を債務控除せずに,持分に応じて債務控除する必要があります。

被相続人が共有不動産の納税通知を受け取っていない場合は,代表して納税通知を受け取っている人に固定資産税の額を確認し,持分に応じて債務控除することを忘れないようにする必要があります。

保安林の名義変更と登録免許税

相続を原因として,保安林の名義変更をするため,法務局に登記申請する際には,登録免許税が必要となります。

登録免許税は,原則不動産の固定資産税評価額の0.4%となります。

保安林の場合,毎年送られてくる固定資産税明細書には,評価額が0円と記載され非課税となっている場合がありますし,そもそも金額が少なく固定資産税納税通知書が送られてこない場合もあります。

また,固定資産税の評価証明書を取得しても0円と記載されることも多いようです。

このことから,登録免許税も0円なのではないかと思う方もいらっしゃいますが,実際には,評価額を記載の上,登録免許税を計算する必要があります。

どのように保安林の評価額を調べるかといいますと,市区町村役場で,近傍山林の1㎡辺りの評価額を確認する必要があります。

評価証明書等の取得を申請する際に,事前に電話をかけ,名義変更に使用する予定であること,近傍山林の1㎡辺りの評価額を記載してほしい旨を資産税課の担当者に伝えれば,保安林の評価額がわかる資料を取得することができます。

単純に,評価証明書を取得するだけでは,保安林の評価額は0円としか記載されないこともありますので,注意が必要です。

細かい運用は,市区町村役場によって異なります。

1㎡辺りの評価額が記載されている場合,不動産の全体の評価額が記載されている場合,、近傍山林の評価額に関する固定資産税評価証明書を出してくれる場合などがあるようです。

名義変更には,意外な落とし穴があることもありますので,心配な場合には,専門家に相談することをおすすめします。

名古屋駅の近くに事務所を構えておりますので,お仕事帰りなどご都合の良い時間に,弁護士法人心までご相談いただければ幸いです。

生前贈与の際の贈与税と相続の際の相続税の違い

今回は,不動産の生前贈与と不動産の相続について,説明していきます。

 

生前に不動産を贈与しておけば,相続の際に,相続人に相続手続きで面倒をかけないで済むのではないかと考える方が多く,相談もよく受けます。

 

自分が死んだら相続人に渡すのだから,生前に渡しても同じだろう,という発想だと思いますが,贈与税と相続税その他の税金のことを説明すると,大抵の方は贈与をやめておくという結論になることが多いです。

 

まず,相続税と贈与税の税率の違いです。相続税は相続財産全体に課税され,贈与税は贈与財産に課税されるので,財産の一部を贈与する場合は,一概に比べるのは,難しいのですが,今回は,わかりやすく相続財産全体と贈与財産を同じと考えます。

 

ポイント1 税率が異なる

例えば,財産は5000万円(相続税評価額)の宅地と無視できる程度に価値が低い自宅のみがすべての財産で,被相続人の法定相続人は子供一人だけと考えます。

この場合,5000万円にかかってくる相続税は,160万円です。

それに対して,生前に子供に5000万円の宅地を贈与しようとしたら,約2049万円の贈与税が発生します。

このように,財産の価値が高いと贈与税は,相続税よりも税率が高くなる傾向があります。

 

ポイント2 相続税の場合は,税額軽減の特例を受けられることがある

上記の例で,子供が,親である被相続人と相続開始時点で同居しており,小規模宅地等の特例の要件を満たしていれば,宅地の評価を8割減額して,相続税評価の計算をすることができます。

この場合,宅地が330㎡以内であれば,1000万円の評価となり,相続税を納付しなくてよくなります。

ただし,小規模宅地の特例の適用を受けるためには,相続税の申告書を税務署に提出することが要件の一つとなっています。

他方,贈与税の場合,相続時精算課税制度の適用により,贈与税を減らすことが考えられますが,相続時精算課税制度の適用を受けても2500万円を超える部分に,課税されます。

また,上記の例の場合には,相続の際に,相続財産に繰り戻されて,相続税が計算されるので,余り意味はありません。

 

ポイント3 登録免許税等が異なる

宅地の固定資産税評価額を相続税評価額と同じ5000万円とします。

相続の場合は,移転登記をする際の登録免許税は不動産価額の0.4%です。

登録免許税は20万円となります。

贈与の場合は,移転登記をする際の登録免許税は不動産価額の2%です。

登録免許税は,100万円となります。

また,忘れがちなのが,不動産取得税です。

登録免許税は,登記時に納税者が自ら計算して法務局に納める必要があるので,忘れる人はいないのですが,不動産取得税は,納税者が計算する必要はなく登記後に自治体から納付書が送られてくるので,贈与時には忘れていたという人,そもそも知らんかったという人さえいます。

不動産取得税は,土地の固定資産税評価額×1/2×3%で算出します。

今回の場合では,75万円の不動産取得税が発生します。

贈与の場合は不動産取得税が発生しますが,相続の場合には発生しません。

 

このように,生前贈与と相続は,全く違った考え方で,税金を計算することになりますので,財産を生前贈与することを考えている方は,どれくらい税金が発生し,相続の場合と異なるのかをシミュレーションし,税金の違いを許容できるかを検討する必要があります。

 

税理士法人心は,名古屋駅の近くに事務所を構えております。お気軽にご相談ください。

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相続税と生命保険金

4月に入りましたが,名古屋はまだ時々寒い日があります。

 

今回は,相続税と生命保険について,説明していきます。

 

保険料負担者及び被保険者を被相続人,保険金の受取人を相続人とする生命保険を利用することで,相続税を軽減できる可能性があります。

死亡保険金は,法定相続人1人につき,500万円の非課税限度額があります。

例えば,法定相続人が3人いる場合は,死亡保険金が1500万円あったとしても,死亡保険金すべてが,非課税となります。

なお,例えば,法定相続人が3人いて,保険金以外の相続財産が5000万円,死亡保険金が2000万円ある場合,課税財産は,5500万円(5000万円+2000万円-1500万円)となります。

 

死亡保険金によって,非課税限度額を最大限利用するためには,現在所有する財産がどれだけあるのか,仮に現在相続が発生した場合に,どれだけ相続税が発生するのかをシミュレーションして,どれだけの額の保険に入るのかを検討する必要があります。

例えば,法定相続人が3人の場合は,基礎控除額は4800万円(3000万円+600万円×3)なので,現在所有している財産が4800万円以下であれば,相続税対策を考える必要はなく,保険に入る必要も,相続税との関係ではないといえます。

 

また,死亡保険金は,納税資金の確保としても利用することができます。

相続財産が土地ばかりであることが予想される場合,相続人間の関係が悪く被相続人の預貯金を引出すことができない可能性がある場合は,納税に必要な資金を相続税申告及び納付の期限である相続後10ヶ月以内に取得できない可能性があります。

他方,保険金は,保険受取人固有の財産ですので,相続人間で紛争が起こったとしても,紛争とは関係なく,保険を受け取ることができます。

 

相続税との関係で保険に入ることを考えられておられる方は,ぜひ一度ご相談ください。

家なき子特例と海外不動産

3月に入りましたが,名古屋はまだまだ寒いです。

家なき子特例は,小規模宅地等の特例の一類型です。

外国に家を所有している方から,家なき子特例の適用を受けることができるのか,質問を受けることがあります。

そもそも,小規模宅地の特例は,土地の相続税評価額を最大8割減額できる制度で,適用できるか否かで相続税額が大きく変わります。

小規模宅地等の特例で,被相続人の住んでいた宅地の場合,配偶者や同居の親族が相続すると,相続税を抑えることができるということを聞いた方も多いと思いますし,適用される件数が多いです。

ただ,配偶者や同居の親族の方でなくとも,小規模宅地等の特例の適用が受けれる場合があります。

そして,その場合,要件のうち重要なのが,相続開始前3年以内に持ち家等に住んでいなかったという要件です。

家を持っていないことが要件になっているので,家なき子特例と呼ばれています。

厳密には,「当該親族、当該親族の配偶者、当該親族の三親等内の親族又は当該親族と特別の関係がある法人として政令で定める法人が所有する家屋(相続開始の直前において当該被相続人の居住の用に供されていた家屋を除く。)」(租税特別措置法69条の4第3項第2号ロ(1))に住んでいなかったという要件です。

これは,単純に持ち家に住んでいなかったことを要件にすれば,家屋の所有者を配偶者名義にするなどして,容易に適用を受けることができるため,このように要件を厳しくなっています。

では,外国に家を所有して住んでいる場合は,家なき子特例の適用をうけることができるのでしょうか。

これは,条文上明らかです。

条文には,「相続開始前三年以内に相続税法の施行地内にある当該親族~が所有する家屋」と規定されていますので,「相続税法の施行地内」すなわち,日本国内の家屋の場合,その他の要件を満たせば,家なき子特例の適用も可能です。

 

このように,小規模宅地等の特例の適用関係は,複雑なこともありますので,ご心配な方は,専門家にご相談されることをおすすめします。

小規模宅地等の特例の落とし穴(特例対象地が複数ある場合)

小規模宅地等の特例は,自宅の土地,マンションを立てている土地について,5割から最大8割,相続税評価額をさげることのできる制度です。

相続税を適切に減らすためには,高額な資産である土地の評価をさげることが一番効果的な方法といえます。名古屋駅の近くに土地をお持ちの方なら,その相続税評価額に驚かれる人も多いのではないかと思います。

ただし,この小規模宅地等の特例は,その特例対象地を取得する相続人が一番得をする,国が特別に認めた制度(厳密には,土地の相続税評価額が低くなれば,相続財産全体が圧縮されるので,各相続人が納めるべき相続税は少なくなります。)なので,その適用は厳格に判断されます。

通達等で適用の範囲が拡大されることもありますが,原則として要件を個別具体的な事案に応じて解釈することはありません。

 

そして,気をつけなければならないのは,相続財産に特例対象地が複数あり,申告期限までに分割が終わっている特例対象地と分割が終わっていない特例対象地がある場合です。

 

通常,申告期限までに特例対象地の分割が終わらなければ,当初申告では,特例の適用をせずに申告し,3年内分割見込書を添付しておき,分割協議が調った時点で,小規模宅地の特例を適用をし,更正の請求をします。

 

しかし,申告期限時点で,分割が終わっていない対象地がある場合には,分割済みの特例対象地に小規模宅地等の特例を適用するために,相続人全員の同意が必要となります。

相続人全員の同意を得ることができず,小規模宅地等の特例を適用せずに当初申告した場合,分割済みの土地について,特例を適用しないことを税務署に対して意思表示したことになってしまい,すべての土地が分割した後でも,申告期限時点での分割済みの土地について,小規模宅地の特例を適用することができなくなります。

 

小規模宅地等の特例は,一番よく聞く特例の一つですので,その適用も簡単に考えがちですが,実際には,落とし穴がたくさんありますので,心配な方は専門家に相談されることをおすすめします。

相続放棄と保険金

本日は,相続放棄と保険金の関係について説明していきます。

 

保険契約の契約者が被相続人,被保険者が被相続人,保険金受取人が被相続人の子供,死亡保険金額は1000万円である場合を考えます。また,被相続人の相続人は,配偶者と子供の2名とします。

 

 

相続放棄と聞くと相続人の財産は全て放棄するので,相続人が契約者かつ被保険者であった死亡保険契約についても放棄する必要がありそう,と思う方もいらっしゃいます。

 

しかし,実際には,死亡保険金は,被相続人の相続財産ではなく,保険金受取人の固有の財産となります。

つまり,被相続人の相続財産を放棄したとしても,保険金受取人である子供は自己の財産として,保険会社から死亡保険金を受け取ることができるのです。

 

ただし,死亡保険金は,本来の相続財産ではありませんが,相続税法の規定により,相続税の対象となります。いわゆる,みなし相続財産といわれます。

 

ですので,被相続人の課税財産が基礎控除額を超える場合(今回のケースであれば,法定相続人は2人なので,4200万円を超える場合)には,保険金を受け取った子供が相続税を支払う必要があります。

 

このケースで,保険金を受け取る場合は,非課税枠があるので,相続税を支払う必要がないのではないかと思う方もいらっしゃると思います。

たしかに,生命保険金の非課税枠は,法定相続人の数×500万円なので,今回のケースのように相続人が2人いれば,1000万円の非課税枠があります。

非課税枠の計算の際には,法定相続人の数が重要なので,相続放棄して相続人が一人減ったとしても,非課税枠の金額は変わりません。

 

しかし,1000万円の非課税枠があったとしても,非課税金額の適用を受けることができるのは,「相続人」であるため,相続放棄をして「相続人」でなくなった被相続人の子供が非課税金額の適用を受けることはできません。

そのため,相続税を納める必要が出てくるのです。

 

このように,相続税は,意外な落とし穴がありますので,相続税が発生しそうな場合は,専門家にご相談することをおすすめします。

税理士法人心は,名古屋駅の近くに事務所を構えておりますので,お気軽にご相談ください。