前回の記事では,配偶者の税額軽減について,概要を説明しました。
今回は,配偶者の税額軽減の注意点に関する記事です。
まず,気をつけなければならないのは,配偶者の軽減は,配偶者が実際に受け取った相続財産を基礎に計算されるため,相続税の申告期限までに分割されていない財産は,原則として,税額軽減の対象にならないということです。
相続税の申告期限とは,被相続人が亡くなった日の翌日から10か月以内です。
ただし,相続税の申告の際に添付書類として,「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出して,3年以内に相続財産を分割すれば税額軽減を受けることができます。
3年以内に分割できなくとも,申告期限後3年経過した日の翌日から2か月以内に,「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認請求書」を税務署に提出し,税務署長の承認を受けていれば,分割できない事情がなくなった後4か月以内に,更正の請求手続をすることで,税額軽減の対象となります。
以前の記事にも書きましたが,相続でもめると3年ぐらいはあっという間に経過してしまいます。
いつまでに,何を何処に提出しなければならないのかは,しっかりと記録し,忘れないようにしましょう。
配偶者の取得した税額の基礎となる財産が1億6000万円(基礎控除等の計算後の配偶者の取得額)で,配偶者の税額軽減を受けられる額も1億6000万円であったのに,これらの手続を忘れた場合,他の特例などを考慮せず単純に相続税を計算すると,
(1億6000万円-1700万円)×40%=5720万円
このように,5720万円の相続税がかかってきます。
絶対に忘れないようにしましょう。
他にも,配偶者の税額軽減を受けられなくなる場合や,配偶者に法定相続分以上に1億6000万円ギリギリまで財産を集中させることでかえって税金面で,後々損をすることもありますので,ご心配な方は,弁護士等の専門家にご相談ください。